できもしないのに「私に任せてください」「自分でできます」などと安易に言う人がいます。はっきり申し上げるなら謙虚さが足りません。

 営業の責任者である豪傑寺部長と猫山課長の会話を読んでください。

●猫山課長:「部長、A社の案件、私に任せてください。必ず受注してきます」

○豪傑寺部長:「どれぐらいの規模になるかな」

●猫山課長:「最低でも800万ぐらいにはしたいです」

○豪傑寺部長:「わかった。意気込みと経験を買って、君にすべて任せる」

●猫山課長:「ありがとうございます。若手の営業を2人つけます。若手はまだまだですが、力を合わせて結果を出します」

○豪傑寺部長:「こういった案件を君はずいぶんこなしてきた。もうチームごと任せてもいいだろう」

●猫山課長:「ご期待に必ず答えます……。ところで部長、あのメールに書いてあったことは本当ですか」

「反対です。コンサルタントなんかに任せられません」

○豪傑寺部長:「コンサルタントのことか」

●猫山課長:「そうです。コンサルタントがやって来て、うちの組織改革をする、なんてメールにありましたが、私は反対です」

○豪傑寺部長:「ほう、君は反対か」

●猫山課長:「誰も反対していないのですか」

○豪傑寺部長:「実のところ、私も含め幹部はほぼ全員、本音では反対だ。賛成しているのは鷲沢社長と竹虎常務だけだ」

●猫山課長:「ですよね、コンサルタントなんかに任せられないでしょう」

○豪傑寺部長:「だったら、誰に任せる」

●猫山課長:「え」

○豪傑寺部長:「昨年秋に鷲沢社長がやってきてから、組織を今後どうするかと何度か厳しく質問された。ところが私たちは社長の問いに答えられずにここまで来てしまった」

●猫山課長:「それはそうですが、幹部やマネジャーでもできなかったことを、外部のコンサルタントなんかにやれるのでしょうか」

○豪傑寺部長:「どういう意味かな」

●猫山課長:「外の人に任せるぐらいなら、私たちでやりましょう。組織改革ぐらいできますよ」

○豪傑寺部長:「……」

●猫山課長:「社長と常務以外、みんな反対なのでしょう。他の部課長も同調してくれるはずです。この会社は私たちの会社です。コンサルタントなんかに頼まなくても私たちの手で……」

○豪傑寺部長:「ダメだ」

●猫山課長:「え」

「君は組織改革をした経験があるのか」

○豪傑寺部長:「A社の案件は任せる。当社の組織改革については任せられない」

●猫山課長:「どうしてですか」

○豪傑寺部長:「さっき言った通り、A社の案件のような仕事を君はかなりこなしてきた。だから任せられる。しかし、組織改革についてはやった経験があるのか」

●猫山課長:「それはないです……。でも、私たちの会社じゃないですか。私たちが一番よく知っているはずです」

○豪傑寺部長:「私もそう思っていた」

●猫山課長:「だったら」

○豪傑寺部長:「去年の12月、君は口内炎になったな」

●猫山課長:「はあ……あの時は悲惨でした。口内炎にはよくなるのですが昨年末は特にひどくて。1週間たっても治らないので病院へ行きました」

○豪傑寺部長:「いつもはどうしていた」

●猫山課長:「塩を塗ったり、蜂蜜をなめたり……」

○豪傑寺部長:「それで治ったのか」

●猫山課長:「いえ……同じことを病院で話したら先生からこっぴどく叱られました。ちゃんと病院に来いと」

○豪傑寺部長:「当然だな。話を戻すがA社の案件にどう取り組むつもりだ。競合が3社ある」

●猫山課長:「競合他社の提案内容はもうつかんでいます。見積額はうちのほうが大きくなりますが、お客様のニーズをしっかり聞いていますから、内容は上です。いけます」

○豪傑寺部長:「現場の調査は」

●猫山課長:「現地のヒアリングは終えています。現場の担当者は当社の提案を支持してくださっています。去年そこをおろそかにしていたので受注できたはずの案件をとれませんでした。今回は大丈夫です」

○豪傑寺部長:「うん。やはり君に任せられる」

●猫山課長: 「ありがとうございます。あのう、組織改革の話は」