「頭でっかちだ、君は」

●獅子山課長:「ええっ」

○鷲沢社長:「簡単に分類できるじゃないか。後はそれぞれのポテンシャルを見極めるだけだ。どうして2カ月も3カ月もかかるのだ」

●獅子山課長:「いや、あの……その」

○鷲沢社長:「頭でっかちだ、君は。何が3Cだ。何がロジックツリーだ。ごたいそうなこと言ってないで付箋を1ブロック持ってこい」

●獅子山課長:「付箋ですか。わ、わかりました……」

○鷲沢社長:「持ってきたか。よし、これだ。ホワイトボードもあるな。今日の夕方5時にメンバーを集めろ。夜の7時までに君たちのポテンシャルが明らかになる」

●獅子山課長:「ええと一体何を」

○鷲沢社長:「切り口をひとつ決めて、そこから思いつくままにアイデアを発散していけ。切り口というのは『商品』『ネット広告』『ソーシャルメディア』とかだ。なんでもいいからひらめいたことを付箋に書いて貼れ。ホワイトボードいっぱいに付箋を貼ってからグルーピングし、統合し、アイデアを収束させていく」

●獅子山課長:「ははあ、ブレーンストーミングですか。それなら他社商品をもっと調査してからのほうがよくないですか」

○鷲沢社長:「自分たちの頭や体の中にある知識や経験を外に出し、それらをつなげて、何かを見出していく。それがブレーンストーミングだ。調査をする必要はないし、その時間もない。時間を切って、全員が集中して取り掛かればいい。それだけだ」

●獅子山課長: 「は、はい」

○鷲沢社長:「聞くところによると、君はコンサルティングファームの出身で、鳴り物入りで当社に入ってきたそうだな。しかし君の部下は全員たたき上げの営業で、4人とも君より5歳以上も年上だ」

●獅子山課長:「そうです……」

○鷲沢社長: 「彼らを動かすために理屈で勝負しようという君の気持ちもわかる。だが、理屈だけでは彼らは動かん。形にこだわらず高速で計画を立て、すぐやってみる術を身につけてくれ」

●獅子山課長:「わかりました」

○鷲沢社長:「今年に入ってから君のチームだけお客様との折衝回数が激減している。社内の会議が多すぎる。もっと現場の時間を増やせ。チームに活力が戻ってくれば、必ず予材は増える」

付箋を使い切る覚悟で意見を出し合う

 色々な方法論や分析手法を使い、頭でっかちに考えたがる人がいます。ノウハウやメソッドを有難がる人もいます。しかし2カ月かけて90点を目指すより、2時間で80点をとる方法を選びましょう。スピードが大事な時代です。

 思いつきやネタを付箋に書き、それをホワイトボードに張り出すやり方は単純に見えますがスピーディですし、強力です。

 付箋に書かれた情報は断片に過ぎませんが、断片を自由に組み合わせたり、グループにまとめたり、順番を入れ替えたりできます。

 ホワイトボードいっぱいに付箋を貼っていくことで全体を俯瞰でき、しかも頭を整理していけます。パソコンの小さな画面やメモ帳ではこうした俯瞰力が養われません。

 メンバーを集め、付箋を1ブロック使い切る覚悟で意見を出し合いましょう。色々なアイデアが出てくるはずです。一人で悩み、考え込んでいても先が見えなくなるばかりです。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。