●多摩部長:「だ、だってそうじゃありませんか。私の部下は4人の課長です。その下には16人の担当営業がいます。全員が持っている商談を私がすべて把握してアクションをとるなんてできません」

○鷲沢社長:「君はそういう極端なことをすぐ言いだす。すべての商談に営業部長の君がアクションをとれなどと誰が言った。私はA社について聞いている」

●多摩部長:「ですから、私が個別商談に踏みこんで動くのは難しいと申し上げたのです」

○鷲沢社長:「いい加減にしたまえ。君の発言はおかしすぎる。今年1月、重要アタック先として7社をリストアップした。A社はそのうちの1社だぞ」

●多摩部長:「あ、ええと……」

○鷲沢社長:「A社にはうちから見て20億円のビジネスポテンシャルがある。にもかかわらず、当社との現状の取引額はたった800万円。営業目標を達成させる材料である『予材』をほとんど開発できていない」

●多摩部長:「そ、そういえば、そうでした」

「君たちは『点』で考えすぎだ」

○鷲沢社長:「君たちは『点』で考えすぎだ。営業は『面』でやるものだ。『点』では揉めない。『面』なら揉める」

●多摩部長:「そこで揉むと言われると、とたんにわからなくなりますが……」

○鷲沢社長:「それより私の質問に答えたまえ。要するに、A社の課長にうちの熊岡君は会っていない。A社の部長に君は会っていない、ということか」

●多摩部長:「……そういうことになります」

○鷲沢社長:「早く言えよ。なるほど、だからキーパーソンである本部長に、なかなか私が会えないわけだ」

●多摩部長:「社長、ご存知ないようですが、A社のキーパーソンである本部長は管理部を見ている方です。雛形が接点を持っているのは技術部の係長です」

○鷲沢社長:「技術部の係長から管理部の担当者を紹介してもらえ」

●多摩部長:「技術部は府中にある工場の中です。管理部は港区の本社にあります」

○鷲沢社長:「だから何だ。ああ言えばこう言うのは止めたまえ! 少しは頭を使って考えろ。府中にいる係長が本社とまったく接しないなんてことがあるか。A社の組織図はどうなっている」

●多摩部長:「い、いや、それは……」

○鷲沢社長:「考えないだけじゃなく、組織図も頭に入っていないのか。組織営業をするうえで基本中の基本だぞ。重要アタック先なのに入社2年目の営業に任せりきりなのか」

●多摩部長:「社長、言わせていただきますが、お客様の組織図を手に入れて絨毯爆撃をしていくのはどうかと思います」

○鷲沢社長:「だから、そういう極端な発想は止めろ。誰が絨毯爆撃をやれと言った。揉むんだよ!」

●多摩部長:「揉む、揉む、と言われても、さっぱりわかりません!」

○鷲沢社長:「さっぱりわからないのは、社内で会議に明け暮れ、君が現場に行ってないからだ! いい加減、現状維持バイアスを外したまえ」

●多摩部長:「……げ、現状維持バイアス」