思い込みや先入観で人を説得しようとしても失敗します。リーダーシップを発揮するには、正しい論拠を持ってメンバーを引っ張らないといけません。正しい論拠とは客観的なデータに基づく事実です。

 今回は明石専務が思い込みに基づく悪しき「持論」を展開します。迎え撃つ鷲沢社長が最後に提示する「事実」がどんな意味を持つのか、注目して読んでみて下さい。

●明石専務:「最近の若い連中はどうもいけませんな。まったく自分から動こうとしない」

○鷲沢社長:「そう愚痴るな」

●明石専務:「愚痴りたくもなりますよ。社長から営業と一緒に回れと命じられて以降、専務の私がお客様のところへ足しげく通っていると言うのに、入社2年目の雛形くんは私よりも毎月の訪問件数が少ない」

○鷲沢社長:「確かに問題だ」

●明石専務:「課長の熊岡くんも嘆いていました。何を言っても無駄のようです」

○鷲沢社長:「本当に何を言っても無駄なのか」

●明石専務:「ええ。全然言うことを聞かないという報告を受けています」

○鷲沢社長:「事実なのか」

●明石専務:「はい。このままではいけません。社長、私に考えがあります」

○鷲沢社長:「なんだ」

●明石専務:「若い子を動かすにはやはり金だと思います。上司が『行け』『やれ』『動け』と口で言っても効果がありません。訪問1件あたり200円出すというのはどうでしょう」

○鷲沢社長:「200円?」

●明石専務:「はい。営業に今与えている訪問目標は月に150件です。目標をクリアしたら3万円になります」

○鷲沢社長:「……」

●明石専務:「毎月3万円って、大きいです。当社は再建中の身ですから、営業手当を大幅に減らしています。3万円はカンフル剤になります」