「奥様から不平を言われませんか」

●球田コンサルタント:「また話を変えますが、最近、ご結婚されたとか。奥様はどんな方ですか」

○犬神専務:「大企業の常務の娘さんで、まあ、お嬢様です。おっとりしています」

●球田コンサルタント:「専務が留学中、海外の大学院で知り合われた。お嬢様が大学院を修了され、めでたく結婚された」

○犬神専務:「よく御存じで」

●球田コンサルタント:「週末、講座へ通ったり、海外へ視察旅行に行ったりすると、不平を言われませんか」

○犬神専務:「えっ!」

●球田コンサルタント:「図星ですか」

○犬神専務:「どうしてわかったのですか」

●球田コンサルタント:「……」

○犬神専務:「まったくその通りです。私は将来社長になるために一所懸命勉強している。それなのに彼女はわかってくれません」

●球田コンサルタント:「……」

○犬神専務:「事業承継をするためには経営の勉強が必要です。他の会社の後継者たちと交流することも大事です」

●球田コンサルタント:「そうでしょう」

○犬神専務:「私だって、父が亡くなり、勉強を断念し、日本へ戻ることにしたとき、葛藤があったのです。しかし、彼女ときたら、まるで理解してくれない。先週末も、『来週の土曜日に後継者の集まりに出かける』と伝えたら、『私と仕事とどっちが大切なの!』と泣き始めました」

●球田コンサルタント:「わかります」

○犬神専務:「球田さん、わかりますか。どうして妻は不満ばかり抱くのでしょうか」

●球田コンサルタント:「ピン!ときていないからです」

○犬神専務:「……」

●球田コンサルタント:「一度も社会に出たことのない奥様は専務が週末どうして勉強しなければならないのか、ピン!とこないのです。専務が理屈を言っても通じません。予材管理の導入に現場が苦労している理由を専務に説明しても通じないのと同じです。現場を知らないと、ピン!ときません」

多くの経験を部下に積んでもらうしかない

 ピン!とこない人は、知識あるいは経験のどちらか、もしくは両方が圧倒的に足りない。こう言えるでしょう。

 

 私が小学生の子どもに「経営コンサルタントとはこういう仕事のこと」と、かみ砕いて説明しても、理解してもらえません。小学生にはピン!とこないことだからです。

 部下がピン!ときてないと、話が噛み合わず、前に進みません。上司はどうしたらよいでしょう。口をすっぱくして繰り返しても、ピン!ときていない部下には通じません。

 残念ながら即効薬はありません。上司が言うことに対して、ピン!とくるように、多くの経験を部下に積んでもらうしかありません。

 上司と部下の対話が重要と言われています。「上司の指示に対し、何か言いたくなっても、まずやってみる。何か言いたければ、やってから」。こういう主張は時代錯誤に見えますが、経験の大事を説いていると思えば、一つの真理です。