「最後の一押し」は必要だが、すべてではない

 「マーケティングの理想は販売を不要にすること」というフレーズが独り歩きしています。そのフレーズが出てくる前の記述を読むと「何らかの販売は必要である」「真のマーケティングは顧客からスタートする」などとドラッカーは書いています。

 「顧客は何を買いたいか」とか、「顧客が見つけようとし、価値ありとし、必要としている満足はこれである」とか、そこを考えよとドラッカーは説いているのです。明石専務が話していたWebや展示会やダイレクトメールはドラッカーの定義でいけば「販売」なのです。

 原文を見ると「販売」はsellingです。明石専務が言う「強く売り込むこと」でしょうか。「もう決めましょう」「迷っている時間がもったいないです。ぜひ当社のサービスをご採用ください」と強くお勧めすることでしょうか。

 こうした「最後の一押し」は必要です。お客様の意思決定を促すために背中を押すことは、我田引水に聞こえるかもしれませんが、お客様への配慮でもあるのです。人は頭の中で買おうと思っていても、なかなか決断できないものだからです。

 当たり前ですが営業活動に占める最後の一押しの比率は1%もないでしょう。営業活動のほとんどは、お客様との関係構築であったり、情報提供であったりします。そして、商品のご案内、提案、手続きの代行などに時間が充てられるのです。

 鷲沢社長が言う「営業活動」はこれらすべてを指しています。ところが明石専務は顧客を訪問し、「買ってください」と最後の一押しをすることが営業活動だとみなしています。駆けずり回って頭を下げるのは気の毒だと誤解し、ドラッカーの言葉を自分の都合に合わせて解釈してしまったわけです。

 ですから二人の話はまったく噛み合いません。営業や販売、それからマーケティングの定義を明確にして、議論したり、本を読んで考えたりしなければなりません。

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 おかげさまで本連載『絶対達成2分間バトル』は今回で第100回目となりました。連載を始めてから2年あまりが経過したことになります。これまで読んでくださった皆様にこの場を借りて御礼を申し上げます。

 これからは今まで以上に刺激的なテーマに挑みたいと考えています。今後もよろしくお願いします。