「仕事ができないようにしているのはお前だ!」
○鷲沢社長:「できないようにしているのはお前だ! 採用した後のことにまったく関心がない。人材育成についてはどうなっている!」
●日高人事部長:「研修制度は整えてあります。でも社長、まずは採用ですよ。いい人材さえ採用できれば、育成だって楽になります」
○社長:「えええーいっ! いい加減にしたまえ!」
●日高人事部長:「あ、いや……」
○鷲沢社長:「いつまで現状を変えないつもりか! 将来の大きな報酬よりも目先の小さな報酬か! それを現状維持バイアスと言うんだ」
●日高人事部長:「く……。げ、現状維持ですか」
○鷲沢社長:「いい加減、現状維持バイアスをはずしたまえ! はっきり言っておく。採用にばかり力を注ぐのは許さん」
●日高人事部長:「そ、そう言われましても……」
○鷲沢社長:「採用面接がうまくなるとかいう研修は自分達で受けているくせに、どうして新人や若手の教育に力を入れない」
●日高人事部長:「さっきも言いましたが制度はあります。手を挙げれば誰でも研修は受けられます」
○鷲沢社長:「ほーそうか。手を挙げて研修を受けたがる社員はどれほどいるのかね。昨年は4人しかいなかった。しかも全員、部課長だ。若手はどうなんだ、若手は。手を挙げない若手を採用した私のミスです、なんて抜かすなよ」
●日高人事部長:「……」
○鷲沢社長:「どうして声がかかるのを待っているんだ。なぜ、自分から若手や新人たちに声をかけない。残業時間がどうのこうのというメールが君たち人事部からやたらと飛んでくる。パソコンの前に座っていないで若い子と面と向かって話をしたらどうだ」
●日高人事部長:「そ、それは……」
○鷲沢社長:「人事部長の君が率先して声をかけないで、どうする。将来ある若者のキャリアに関して相談に乗る、それが人事の仕事というものだ。今の君は人事部長ではなく、ただの採用部長だ」
●日高人事部長:「さ、採用部長ですか」
○鷲沢社長:「『指示待ち部下』も良くないが『相談待ち上司』はもっとたちが悪い。上司から『いつでも相談してくれ』と言われても、なかなか相談しにくいものだ。だから上司が日頃から声を掛ける必要がある」
●日高人事部長:「確かに相手から何か言ってくるのを待っていたようです。『相談待ち上司』にならぬよう、声をかけていきます」
組織に溶け込めないとすべてが水の泡
採用はとても大切だと、そこにコストと時間を費やしてばかりいる人事部があります。採用は大事なのですが、採用した人たちのキャリア形成はもっと大事です。
組織に溶け込むための手助けやケアを疎かにしていると、どれほどコストと時間をかけて良い人材を採用していても、すべてが水の泡になります。
若い人たちの不本意な離職は当人にとっても組織にとってもダメージを与えます。人事部門はもちろん、周囲も含め、会社全体で若手を支えていく必要があります。言うまでもないですが、甘やかすということではありません。
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