業務の棚卸しで出てくるのは言い訳ばかり

○鷲沢社長:「業務の棚卸しか。駄目だな、はっきり言って。今の業務にムリ、ムダ、ムラはありません、それより人が足りないです、といった報告が上がってくるだけだ。私が銀行マンをしていたとき、色々な取引先で棚卸しをしてもらったが、出てきたのは言い訳の材料ばかりだった」

●鳥山人事課長:「しかし……」

○鷲沢社長:「もっとシンプルに物事を考えて、何かひとつに焦点を合わせろ。複雑なことをして意識をあちらこちらに向けさせても中途半端になって何も定着しない」

●鳥山人事課長:「ひとつと言われても何がよいのでしょうか」

○鷲沢社長:「メールだ」

●鳥山人事課長:「え!」

○鷲沢社長:「着任してすぐ、この会社のメールの多さに私は驚いた」

●鳥山人事課長:「確かにメールは多いですね」

○鷲沢社長:「はっきり言って異常だ。パソコンの前に座っている奴は全員、メールばかりしている。それで仕事をしたつもりになっている」

●鳥山人事課長:「いくらなんでも、そこまでひどくはありませんよ」

○鷲沢社長:「いや、そうに決まっている。クリエイティブ部も営業部も昼間はメールしかやってない。本来の仕事は夕方からだ。自分たちで認めているじゃないか。『6時から本気を出す』と」

●鳥山人事課長:「彼らの残業時間が長いのは確かですが、メールのせいだと決めつけるのはよくありませんよ、社長」

○鷲沢社長:「私の思い込みだと言うのか」

●鳥山人事課長:「先入観が強すぎると思います」

○鷲沢社長:「よし、はっきりさせよう」

●鳥山人事課長:「はっきり?」

○鷲沢社長:「メール時間の上限を決めよう。月に60時間だ」

●鳥山人事課長:「60時間……」

○鷲沢社長:「メールソフトを起動してキーボードを使っている時間を計測できるか、情報システム部に聞いてみよう。可能なら、政府を見習って60時間を超えたら罰則を科すことも先々検討しよう」

●鳥山人事課長:「そんな」

○鷲沢社長:「何か問題があるか」

●鳥山人事課長:「いくらなんでも横暴ですよ。メールの時間を制限するだなんて」

○鷲沢社長:「いいか、月間60時間、つまり1日3時間弱だ。3時間近くもメールを見たり書いたりできる。文句などないはずだ」

●鳥山人事課長:「……」

○鷲沢社長:「どんな職種であろうと1日3時間以上もメールを眺めたり書いたりしているだなんておかしい。誰が60時間を超えているのか、はっきりさせよう」

●鳥山人事課長:「私も気をつけないと……」