○鷲沢社長:「そうじゃないか。Win-Winだか何だか知らないが、M社にばかり頼っていて、それで売れると思うなんて虫が良すぎる」

●多摩部長:「そんなことはありません!」

○鷲沢社長:「だったらなぜ自ら動こうとしない? 出方を見ていたなんて言い訳にもならん」

●多摩部長:「販売パートナーはあくまでも販売パートナーです。我が社から先に動いたら相手に甘く見られるだけです!」

○鷲沢社長:「馬鹿野郎! パートナーに対してなんて態度だっ」

●多摩部長:「あ、いや、社長……」

○鷲沢社長:「いつまで過去にしがみついているつもりだ! それが現状維持バイアスと知ってのことか!」

●多摩部長:「げ、現状維持バイアス……」

○鷲沢社長:「いい加減、現状維持バイアスを外したまえ! まずWin-Winなんて言葉を使うのを止めろ!」

●多摩部長:「し、しかし」

○鷲沢社長:「Win-Winと聞くと、お互い対等という感じがある。だが、さっきの発言を聞く限り、君自身が対等と思っていないじゃないか」

●多摩部長:「……」

○鷲沢社長:「私がWin-Winという言葉を使わないのは、結局どちらも及び腰になって様子見になりがちだからだ。『一緒にやりましょう、Win-Winでいきましょう』と最初は盛り上がるが、いざとなるとまったく動かない。まあ、ここのところだけ君の話は正しい」

●多摩部長:「……。あのときは本当に盛り上がったのですが」

○鷲沢社長:「Win-Winを持ち出すと“お互い対等”という意識が出過ぎてしまう。相手が50%の力でやればこっちも50%。こっちが30%だと相手も30%になったりする」

●多摩部長:「なるほど……。お互い対等と思っていると見合ってしまうことがありますよね」

○鷲沢社長:「ましてや『先に動いたら相手に甘く見られる』なんて馬鹿な考えでいたら、こっちがゼロなんだから相手だってゼロになる」

●多摩部長:「申し訳ありません」

○鷲沢社長:「パートナー企業と協業するなら、我が社が引っ張っていくぐらいの気持ちを持て。そうでないと結果など出ない。その気概がないまま、パートナーの数だけ増やしても意味がない」

「相手以上の努力をする」という気持ちがお互いに必要

 “Win-Win”という言葉をポジティブにとらえると、双方とも同等に協力し、平等の結果をもたらすよう努力しましょう、となります。これはこれで結構なことです。

 ところがネガティブにとらえてしまうと、相手より余計に行動したときに損をしたと思えてきます。相手が得た結果のほうが大きいと不平等だと言い出しかねません。こんな状態で協業がうまくいくはずがないでしょう。

 「相手以上の努力をする」という気持ちがお互いにないと、結局はどちらも期待した通りの結果を手に入れられません。物事の基本でしょうが謙虚な気持ちが大切です。

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