●多摩部長:「はい。M社の本部長が当社に挨拶に来ましたし、当社からは専務が出向いて、M社の社長と会食しました」

○鷲沢社長:「私は出張だったので行けなかったが、その夜は意気投合したと専務が言っていたな」

●多摩部長:「はい。うちの専務とM社の社長が『しっかり手を握り、大儲けしましょう!』と誓い合ったのです」

○鷲沢社長:「君はその場にいたのか」

●多摩部長:「はい。M社の本部長もいて、お互い、かなり期待を持ちました」

○鷲沢社長:「それで?」

●多摩部長:「ところが、その後、M社が自分のキャンペーンで忙しいとか言い出し、当社との協業にあまり手を貸してくれなかったのです」

「結局、何もしなかったわけだ」

○鷲沢社長:「省略して話さないでくれ。問題が特定できない。専務とM社の社長が食事したのは去年の秋だったな」

●多摩部長:「ええ。9月でした」

○鷲沢社長:「それから?」

●多摩部長:「先ほども言ったとおり、M社のキャンペーンがありまして……」

○鷲沢社長:「そのキャンペーンって年末だろう。食事をした9月から飛び過ぎている」

●多摩部長:「M社がそう言ってきたのです。キャンペーンがあるので――」

○鷲沢社長:「話が見えん。M社の担当者が食事会の翌日に、年末キャンペーンが忙しいと言ってきたのかね」

●多摩部長:「いや、そんなことはありませんが」

○鷲沢社長:「それならいつだ」

●多摩部長:「それは……11月に入ってからだと思いますが」

○鷲沢社長:「おいおい。食事会の後、何もしていなかったのか」

●多摩部長:「何もしてないわけではありません、よ……」

○鷲沢社長:「やったことを教えてくれ」

●多摩部長:「ええと、販売プロモーションに使うパンフレットやプレゼンテーションソフトを整備しましたし、当社の説明員の事前トレーニングもやりましたし」

○鷲沢社長:「当たり前だ、それは。M社に限った仕事じゃないだろう。結局、M社に対して何もしなかったわけだ」

●多摩部長:「M社の出方を見ていたのです。そもそもWin-Winなんですよ。なのにどうして我が社ばかり動かないといけないのですか」

○鷲沢社長:「我が社ばかりってどういう意味だ。何もしていないのに」

●多摩部長:「何もしていないって……」

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