“Win-Win”という言葉は交渉の場で結構使われています。私も勝って、あなたも勝つ、ということですから、双方に利益がある良好な関係を築きましょうという意図が込められています。

 しかし「Win-Winの関係でいきましょう」と言って握手をしたにもかかわらず、うまくいかないことが多いのが現実でしょう。どうしてでしょうか。

 今回のバトルは商社の社長と営業部長が対決します。なお、今回の記事から人名を付けてみましたが他意はありません。やたらと“Win-Win”を持ち出す営業部長の発言に注目して読んでください。

●多摩部長:「社長、今年は販売パートナー企業をもっと増やしたいと思います。このままでは売り上げが増えません」

○鷲沢社長:「またその話か? どれだけ増やせば気が済むんだ」

●多摩部長:「すいません。色々と当てが外れまして。打ち合わせのときは乗り気でも、いざとなると行動しない、口ばかりのパートナーが多く、見込み通りに売り上げられないことになりました」

○鷲沢社長:「いざとなると行動しないと言うが、相手に求めるばかりじゃあ駄目だろう」

●多摩部長:「もちろんです。しかし、Win-Winと言うじゃありませんか。お互いが協力し合って進めないといけません」

○鷲沢社長:「私はWin-Winという言葉を信じていない」

●多摩部長:「え! じゃあ、どうするんですか。当社だけ勝てばいいんですか」

○鷲沢社長:「そんなことは言っていない」

●多摩部長:「お考えがよく分かりませんが、私はWin-Winがパートナーシップの基本だと思っています」

○鷲沢社長:「それでは聞くが『お互いパートナーとして頑張りましょう』と言い合っていたM社はどうした?」

●多摩部長:「社長、私が言っているのは、まさにそのM社です。本当に当てが外れました。まったくWin-Winになっていません」

○鷲沢社長:「具体的に話してくれ」

●多摩部長:「わかりました。お互いの販売目標を決めて、販促プロモーションを一緒にやっていきましょう、という話になったのです」

○鷲沢社長:「知っているよ。すごく盛り上がっていたな」

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