「私の目が節穴だと思うな!」

○鷲沢社長:「私の目が節穴だと思うな! 過去の貯金があるから今、落ちてないだけだ。予材はどうなっている」

●柳本課長:「商談の材料を目標額の2倍積んでおく予材管理ですね。ええと」

○鷲沢社長:「他の課は確実に予材を積み上げている。コツコツやってきて、目標の2倍に達しようとしている。君の課はどうだ。予材が増えるどころか減り続けている。病気にはなっていないが、身体の抵抗力が落ちている状態だ。売り上げ実績だけ見ていて経営ができるか。私は課のパフォーマンスを予材で判断する」

●柳本課長:「……」

○鷲沢社長:「セクハラやパワハラは論外だが、ジタハラも許さん。やるべきことをやらせず、強引に帰宅させるのは止めろ」

●柳本課長:「どうすればいいのでしょうか」

○鷲沢社長:「君の娘さんの例え話をしただろう。まずはやるべきことをやらせる。それができるようになったら業務を見直し、残業を減らしていくのが大原則だ。やるべきことをやらせるのに長時間の残業が生じるなら、それは君のやり方がマズイからだ。出発点は残業削減じゃない。手順を間違えるな」

目標を達成できない組織に仕事の仕分けは不可能

 長時間労働の是正は日本企業にとって重要な課題となっています。現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントとして私は、長時間労働が常態の企業であれば無駄な残業を絶対に削減させます。

 ただし、当然のことながら時短を進める前提条件は「売り上げや利益目標を達成した状態」あるいは「達成できる状態」になっていることです。仕事があるにもかかわらず、なりふり構わず「残業をしないで帰れ」と言うわけにはいきません。

 目標を達成させるためにはどれぐらいの仕事が必要か。どんな仕事が必要でないか。こうした点を仕分けすることになります。

 目標を達成できてもいない組織に仕事の仕分けができるでしょうか。できないのです。

 目標の達成率が90%だったら、あと10%、売り上げを増やせばいい、仕事も1割増。こんな単純な話ではありません。10%を上積みするためには、仕事の量を2倍あるいは3倍にしなければならないかもしれません。

 3倍なんてとても無理だとなったら、仕事の中身あるいはやり方を大きく変えるしかありません。ボタンひとつでパソコンが再起動するように、仕事のやり方をすぐにリセットできるかというと、できません。

 特にお客様と直接向き合っている営業の職場では、複雑に絡み合った人間と人間とのややこしい関係を調整し、仕事量のバランスを保ちながら、徐々にあるべき姿へと近づけることになります。新しいやり方を見つけるために試行錯誤の時間が一定量必要になります。

 にもかかわらず、世間体を重んじすぎて、「時短だ」「残業ゼロ」「長時間労働を撲滅せよ」とマネジャーが叫び、「帰りたまえ」と強制したらどうなるでしょう。真っ当な現場であれば「ちょっと待ってください」と言いたくなります。その声を押し潰そうとするなら、まさにジタハラです。

 繰り返しますが長時間労働を是正することは、すべての日本企業に課せられた責務です。だからといって現場感覚のない上司が時短を強要すると、結果を出したい、目標を達成したいという意欲の高い真面目な部下を苦しめます。