「野望だ、いや、野心だ!」

○鷲沢社長:「野望だ、いや、野心だ!」

●竹虎常務:「や、野心?」

○鷲沢社長:「経営野心と名付けよう。心に灯をともす経営野心」

●竹虎常務:「すごい表現ですね。ただ、人に刃向かうとか、分不相応な望みを抱くとか、そういう意味ですから、あまり良くない気が……」

○鷲沢社長:「いいじゃないか。社長や上司がつまらないことを言ったら刃向かってもらいたい。分相応とか言っている場合ではないだろう、今の当社は」

●竹虎常務:「それはそうですが……経営野心はどういうものになるのですか」

○鷲沢社長:「日本最大の広告代理店になる。いや、世界一の広告会社になるとか」

●竹虎常務:「いくらなんでも日本最大とか世界一とか……かえって信じられません。残業を減らせないか、女性管理者を少しでも増やせないか、そういうことで悩んでいるのに」

○鷲沢社長:「何を言う!そんなことでは若い人たちに夢を見せられない。希望を持たせることが社長や経営陣の務めです」

●竹虎常務:「えええ……」

○鷲沢社長:「広告という言葉にこだわっている時代でもない。広告だけではなく、マーケティングやデジタルコミュニケーションの分野にも事業を広げていきたい」

●竹虎常務:「ということは……メディアですかね」

○鷲沢社長:「メディア!」

●竹虎常務:「えっ」

○鷲沢社長:「そうだ! 世界一のメディア会社になる。これは凄い」

●竹虎常務:「ちょ、ちょっと待ってください、社長」

○鷲沢社長:「私が打ち出す当社の経営野心は『世界一のメディア会社になる』だ」

●竹虎常務:「……」

○鷲沢社長:「この経営野心は経営理念につながる。世界一のメディア会社になれば、企業のさまざまな課題を解決でき、社会に貢献できるじゃないか。どうです、常務」

●竹虎常務:「眠れなくなるフレーズであることは確かです」

恥ずかしくなるフレーズを照れることなく言い放つ

 経営理念を正しく社内に浸透させ、定着させることが社長の務めです。ただし、それは平時のことで、有事のときは理念だけではなく、カンフル剤として社長が発するストロング系のメッセージがあっていいと私は思います。

 それが「経営野心」です。大袈裟でも荒唐無稽でもかまいません。それを聞いた若い社員たちが「よし!」と思ってくれたらいいのです。

 「このぐらいが当社の身の丈に合っている」などと社長が考えるようでは、社員はついてきてくれません。みんながドキドキする、少々恥ずかしくなるフレーズを照れることなく言い放つ。それもトップの務めです。