「生ぬるい!私の方針など誰も聞きません」

○鷲沢社長:「経営や組織を改革するには、あり方、存在意義、理念から始めないと。そうだ、そもそも私が忘れていたのかもしれない……先代の社長が亡くなる直前、私を後継社長に指名したと聞いて、すぐ調べたのは当社の経営理念です」

●竹虎常務:「高品質の広告を通じて、で始まる言葉ですね」

○鷲沢社長:「『高品質の広告を通じて、企業の課題解決を促し、社会に貢献する』となっています。当社の存在意義であり、『あり方』です。片仮名で言えばミッション」

●竹虎常務:「『やり方』ではないですね、確かに。行動規範は7項目あります。こちらもすべて『あり方』ですね。行動規範をバリューとすると、ビジョンは……」

○鷲沢社長:「先代社長が遺した中期経営計画でしょう。3年後に海外拠点を増やし、売り上げを1.5倍に、利益を2倍にしなければなりません」

●竹虎常務:「はい。ミッション、ビジョン、バリュー、一通りありますね」

○鷲沢社長:「あることはある。ただ、単なるお題目になっている気がするのです。社員全員の腹に落ちていないというか」

●竹虎常務:「理念と規範は創業時に先代が書いたままですからね。規範を読むと言葉が少々古めかしいですし」

○鷲沢社長:「古くてもかまわないが刺激が足りない。改革を進めるにはもっとパンチの効いたフレーズでないと」

●竹虎常務:「パンチの効いたって……」

○鷲沢社長:「先代社長が書いた経営理念は変えられません。今後もリスペクトしないと。行動規範もよく考えられています。小手先の直しを入れるくらいならそのままでいい」

●竹虎常務:「社長方針とか社長メッセージを出されたらいかがでしょうか」

○鷲沢社長:「生ぬるい!私の方針など誰も聞きませんよ」

●竹虎常務:「社長、そんなことはありません……」

○鷲沢社長:「みんなが眠れなくなるようなものを打ち出せないか」

●竹虎常務:「ええっ」

○鷲沢社長:「方針やメッセージでは弱い。戦略では堅いし、他人事になる。使命はどうかな。ミッションだから経営理念と同じか。目が醒める言葉は……」

●竹虎常務:「……大志とか」

○鷲沢社長:「いいじゃないか、なかなか。ただ、青少年向けかもしれない……」

●竹虎常務:「……」

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