こういった厳しい状況下で、必要なモノやサービスの確保に、ただやみくもに購入価格をアップするだけでは、調達部門の存在意義が問われる。価格以外でサプライヤーを引きつけ、説得する術を持っているかどうか。QCDの中でもQ(品質)やD(納期)といった面に従来以上にフォーカスし、総合的に自社に不利にならない購入条件を設定する調整能力が求められるだろう。

 加えて調達部門は、マーケットの実情を伝えて理解を促す、社内に対する発言力が試される。企業の購買力は、調達部門だけの力ではなく、企業全体の力の総和である。サプライヤーとの交渉が思わしくない状況も、事実を社内で共有できるかどうか。関連部門のサポートを得ながら全力で交渉しなければ、解決しないほどの大きな課題に直面する企業もあるだろう。

サプライチェーンにまつわる「カネ」

 3つ目は「カネ」だ。これまでに述べてきた「ヒト」や「モノ」の状況を考えると、2018年はさまざまな価格が値上げする1年になるだろう。これまで低価格を求めてきた横並びの企業姿勢も、総じて値上げ志向に転じる可能性がある。2017年にサプライチェーンを騒がせた話題を考えれば理解できるだろう。

 「持続的な調達」がより企業に浸透すれば、持続可能性を担保するためにコストは発生する。二酸化炭素の排出量削減から、脱炭素化へグローバルなトレンドは進化し、環境対応は厳格さを増している。人権へ配慮した労働条件設定はグローバルに広がりを見せている。こういった企業の社会的責任の実践に要するコストは、販売価格に転嫁するしかない。ここで重要なのは、値上げする根拠・理由である。

 値上げした分、消費者へ相応の価値を提供できるかどうかが企業に求められるだろう。設定された価格には、数値を裏付ける根拠があるはずだ。そういった値上げした価格にまつわる背景をストーリーとして、ブランド構築にまで活用できるかどうかが企業に求められる。そして値上げをしつつも、企業内ではまっとうなコスト削減の取り組みが必要だ。かつての食品業界のように、産地や食材の種類を偽って低価格で提供するのではなく、品質を担保しつつ消費者に喜ばれる価格設定をどのように行うか。企業の創意工夫が問われるはずだ。

サプライチェーンを動かす「情報」

 最後に「情報」だ。サプライチェーンマネジメントはトヨタの「かんばん方式」をベースにし、ITを活用して効率的なシステム化を実現するアメリカ生まれの経営手法である。人間系で処理していた情報を、システムを活用した情報流通を実現させ効率化を図るのがポイントだ。アメリカ生まれといっても、そもそも日本国内で行われていた企業間の取引慣行がベースになっている。したがって、サプライチェーンを流通する情報は、日本企業にも必ず存在する。したがって効率化の余地は存分に残っているのだ。問題は情報伝達の方法である。

 サプライチェーンを流通する情報は、同じ企業の中では電子データとして流通している場合が多い。でも異なる企業に伝達する場合は、最終的に紙で伝えられる場合があるだろう。顧客から紙で発行された注文書や納品書から情報を読み取って、自社内に展開する仕事があるはずだ。

 サプライチェーンの情報流通の効率化は、こういった人の介在する情報流通をいかに少なくするかだ。異なる企業間であっても、同じソースをベースにしたペーパーレス=データによる情報流通が実現すれば、効率がアップするし、需要動向を読み誤りも減少する。できるだけ手間をかけず、かつ正確な情報流通の実現が、日本企業全体に求められているのである。

 サプライチェーンは、企業に必要な四つの経営資源を効率的かつ円滑に動かしてこそ機能する。サプライチェーン全体を1つのバーチャルな企業として考えるのである。サプライチェーンを機能的に「動かす」には、企業全体だけではなくサプライチェーン全体を俯瞰する視点が欠かせない。営業や技術、総務や人事といった管理部門、そしてサプライヤーも自社のサプライチェーンを構成する一要素だ。この事実に気づき、スピード感をもって対処した企業こそ、2018年に大きく飛躍できる可能性をもっているのである。