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(写真:Ben Weller/アフロ)

 2018年も残すところあと数日だ。今回は2018年に起こったサプライチェーンにまつわる事件を振り返り、2019年に行うべき備えについて述べる。2019年、部品や原材料の購入行為の重要性はより低くなってゆく。購入する前の準備や、購入した後のサプライヤー評価を次の購入機会に的確に反映させる取り組みなどの重要性がより高まってゆくのだ。バイヤーといえども単にサプライヤーから買っている場合ではない。適切に買う準備をする「買わないバイヤー」の存在が、企業の競争力やブランド力工場の成否を握るはずだ。

サプライチェーンの断絶

 2018年も、さまざまな要因によって、さまざまな形でサプライチェーンの断絶が顕在化した。自然災害の発生だけを見ても、北海道や大阪では大きな地震が発生し、7月の大雨では200人以上の方が命を落とす災害に見舞われた。印象的なのは、今年被害が大きかった災害は「水」にまつわる点だ。日本の自然災害に対する備えは、度重なって発生する大地震によって、どうしても「揺れ」への対応が中心になってしまう。

 今年日本を襲った台風や大雨は、予測技術の向上によって、事前にマスコミを通じ事態の重大性を多頻度にわたって警告していた。「過去に経験のない」といったフレーズを記憶している人も多いはずだ。結果的には、7月の西日本豪雨では非常に多くの人命が犠牲になってしまった。被害の大きかった地域は、事前に公表されたハザードマップに記載された「水」にまつわるリスクが顕在化したのである。この点は、これからのサプライチェーン管理に大きな示唆を与えている。

 どんな災害であったとしても、まず人命を第一に尊重すべきだ。企業によっては、自然災害の発生に備えたBCP(事業継続計画)を作成している。自然災害は、常に企業の業務時間内に猛威を振るうわけではない。少なくとも、会社にいるとき、自宅にいるとき、それぞれ通勤途中や出張、移動中のパターンで、昼夜と時間帯も分ける必要がある。それぞれのパターンで、従業員とその家族がどのように対処すべきかの事前検討がなければ真のBCPではないのだ。

 特に夜間、自宅における行動計画が、人命を守る最短距離になるはずだ。2019年も地震や大雨、台風に襲われれば、サプライチェーンが危機にひんするだろう。企業では、サプライチェーンへの被害をゼロにするのではなく、できるだけ少なくする「減災」が対応の中心になっている。しかし人命「減災」ではダメなのだ。すべて漏れなく守らなければ、企業の減災による最低限の被害からの復旧もできなくなってしまうのである。

 サプライチェーンの管理では、自社だけでなくサプライヤーにも同じような自然災害への事前準備が欠かせない。企業によってリソースが異なるとは言っても「人命を守る」点では、どんな企業でも方向性は一致できるはずだ。サプライヤー管理の最重要かつ優先度の高いテーマとして扱う必要があるだろう。

政治情勢によるサプライチェーン混乱

 アメリカのトランプ大統領によって引き起こされた米中貿易戦争は、世界第一、二位の経済大国同士の争いだ。過去の日米貿易戦争と大きく異なる点は、アメリカと中国の経済活動には、日本をはじめとして、さまざまな国々を巻き込んだグローバルなサプライチェーンが存在していることだ。多くの日本企業も、対応に苦慮しているはずだ。

 今回の米中貿易戦争で、企業に課された高い関税の影響は、関税を支払うか、あるいは自社のサプライチェーンから、アメリカと中国を外して回避するしかない。まず自社のサプライチェーンが、米中貿易戦争によってどのような影響を受けるかについて、正しい理解が必要だ。できれば競合企業のサプライチェーンによる影響度を掌握もすべきだ。現状分析をおこなった上で、関税を支払うのかあるいは回避するのかを、サプライチェーンを再設計し、新たなサプライチェーンを決定するのである。