④価格査定+AI、あるいはコンサルティング+オープン化
繰り返しになるが不思議な、これまで想像もできなかった組み合わせが輝く年だった。
個人的な経験でいえば、20年ぶりに、プログラミング言語を覚えることになろうとは思いもしなかった。現在、私はサプライチェーンのコンサルティングに従業している。この世界でも、他の世界と同じく「AIがすべてを変える」といった流言が流布している。しかし、話してみると、それらを語る主は文系出身記者か経営者で、実際にAIのロジックを理解しているわけではない。
そこで、その実態と限界を知るために、一度、みずからやってみようと思ったのが2017年のはじめだ。そこからプログラミング言語のPythonを悪戦苦闘しながら学習し、そしてソフトをつくってみた。
やりたかったのは、簡単にいうと、原価計算だ。たとえば、製造業で継続調達している金属加工品があったとする。さまざまな金属加工品を調達していると、過去履歴がたまってくる。この仕様のときはいくら、こっちの仕様のときはいくら。では、そのデータを活用して、新規の金属加工品を価格査定できないか。これまではプロの調達担当者が図面とにらめっこしながら価格をはじいていた。
そこで、コンピューターに機械学習させ、そして、価格を算出させた。通常、コンサルティング会社は、これをノウハウ化して囲い込む。しかし、コンサルティングとオープン化という、真逆のものを組み合わせたらどうか。そう考え、その機械学習の成果と問題点を自社で公開することにした。多くの反響をいただき、いくつもの企業の調達部門から、勉強会に呼ばれるにいたった。
サプライチェーン2018
物流やサプライチェーンは、ただただ齢を重ねていくだけなのか。そうではない。このところの変化は、こういった分野でも革新は可能なのだ、と教えてくれる。もちろんアマゾンの空中倉庫のように、それは荒唐無稽のメルヘンといえなくもない。しかし、そのような構想のなかから、将来を変える、という熱量はまちがいなく伝わってくる。
2018年も、不思議な、これまで想像もできなかった組み合わせが輝く年になるだろうか。
真面目に書くならば、クラウドコンピューティング、AIなどの発展によってサプライチェーンは変わり続けていくだろう。在庫管理、調達管理、まだまだ人手のかかるこの分野で、2021年までにグローバル企業の25%がAIを活用すると予想されている。
2018年は、2017年の流れを汲み、データ・ドリブン・サプライチェーンともいえる動きが加速していく。これまでの受注ビッグデータをもとに、出荷数量が予想され、そして生産管理システムと連携する。工場内では、各作業者がIoTで管理され、生産効率が向上していく。
先端のテクノロジーが使える分野を探し、サプライチェーンを革新していく。もちろん、その過程はいっかいの革新で終わるはずもなく、その苦しい戦いはずっと続けられねばならない。同時に、現在、あまりに熱狂しすぎているAIバブルも冷め、現実的に適用可能な領域が真面目に議論されるだろう。
そして、個人的には、そこで2018年を通じて、人間に残る仕事を考えていきたいと考えている。私は、個人的な経験から、「価格査定+AI」、あるいは「コンサルティング+オープン化」なる、不思議な組み合わせに僥倖を得た話を書いた。この試みが成功だったのか、それはまだ不明だ。ただ、1つ気づいたことがある。
私は、サプライチェーンとAIの可能性について、各所で話している。しかし、そこでの感想を見ると、AIそのものよりも、自社を変革しようとする熱を書いてくれることが多い。AIうんぬんではなく、私の熱量が伝わったのではないか、と思う。
AIにできないことは、ひとに熱っぽさを伝導すること、そしてモチベートすることだ。業務が変わり続け、機械がすみずみに浸潤してくるなか、人間がなすべきことは何か。2017年の変化は、2018年に向けて課題を投げかけている。
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