①飛行船+倉庫

 2017年は、不思議な、これまで想像もできなかった組み合わせが輝く年であった。人間は自分が生きる時代を選択できない。選択できるのはせいぜい、焼酎の銘柄くらいだ。とはいえ、私は自分自身の専門領域であるサプライチェーンが激変する時代に立ち会えて幸せだと思っている。

 このところ、米国・小売業の二巨人が空中戦を行っている。これは比喩ではなく、実際に空中での戦いだ。アマゾンは飛行船に商品を積み、そこからドローンによって地上の消費者宅へ商品を届けるアイデアを公表した。これは空のフィルフルメントセンターといえる。まるでSFで、しかし、アマゾンなら実現するのではと期待が高まった。

 ウォルマートも、同時期に、同じくこの浮遊倉庫を考案している。自動で、あるいは遠隔で操作される浮遊倉庫から商品が提供される。

 これらはいわゆるラストワンマイル問題に対応したものだ。消費者へ届ける手段としては、配達員が一般的だったが、これからさらに増えるインターネット通販がコストを圧迫している。それを飛行船という、考えもつかなかった組み合わせでイノベーションを起こそうとしている。

②インプラント+センサー

 現在、働き方改革が日本では話題になっている。そして、それは自社だけにとどまらず、取引先にも過重労働を課してはならない。米アップルも、「サプライヤー責任」と題す報告書を出し、取引先の人権保護に取り組んでいる。

 しかし、取引先であれ、自社であれ、どのようにすれば隠れ残業を排除し、適正な労務管理ができるのか。そこで誕生した不思議な結合は、インプラント技術と非接触型センサーだった。米Three Square Marketは、従業員にインプラントによってセンサーを埋め込む。これで、従業員の労働時間を管理できる。また、社内のPCにアクセスしたり、自社内販売機で商品を購入できたりする。管理が必要なドアからの入室も可能だ。もちろん、拒絶反応はあるだろう。ただ、強制で埋め込むわけではない。また、その恐怖感を超えて、私はある種の可能性を感じる。

③ブロックチェーン+物流

 ブロックチェーンは、ビットコインなどの仮想通貨で、2017年にいちやく有名になった。いわゆる分散型台帳技術で、取引履歴が記録されており、文字通り、参加者に分散して保存されている。そのブロックチェーンが物流領域にも本格適用されようとしている。

 改ざんされない台帳だから、それはプレイヤー間の透明性をもたらす。どの商品がいつ、どこに運ばれているか。そして保険がどうなっているのか、通関がどうか。それらを記録し、追跡が容易になれば効率性は向上し、コストは低減される。

 また同じくスマートコントラクトの動きもある。これはブロックチェーンの技術を活用して、契約状態の履行などを自動管理するものだ。たとえば、物流会社で繁忙期に、顧客からの要求に答えられない場合がある。しかし、複数の物流会社で連合体をつくり、スマートコントラクトを活用できるだろう。キャパを超える案件をデータ入力し、たまたま空いている他企業がそれを受注する。紹介した企業は仲介料を受け取る。それらを透明化・自動化できる。

 ところで、製造業などで不良品が市場流出した場合、特定の部品が原因だとわかった、とする。その際、どのロット番号のものが、どの製品に組み込まれ、さらにどこに出荷されたか、いまだに確認に時間がかかる。それもブロックチェーン技術が容易にしていく。

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