前述のとおり、もともと日本ではモモ肉のほうは需要があり、キロあたり、ムネ肉の倍ほどの価格で推移していた。モモ肉はキロ500円に対し、ムネ肉は250円といった感じだ。だから、日本で根強く残る節約志向にはぴったりの食材だったといっていい。それに、ムネ肉に限らず、鶏肉は高タンパク質で、低脂肪の印象があったためなおさらだった。現在ではムネ肉が好調すぎるため、モモ肉との差が縮まってきたほどだ。

 ただ、それだけではなく、各社の品質向上策も功を奏した。肉はむしろヘルシーだという逆転のPR戦略と、抗疲労役割があると喧伝されたことで、鶏肉は注目を浴びるのが必然となったと考えてもいい。

 さらに鶏肉には追い風も吹いていた。魚はあまりにも漁獲高が不安定で敬遠された。牛肉は輸入分が多いため為替の変動によってリスクと写った。さらに子牛不足は供給量を制限してきた。豚は2014年の豚流行性下痢によって、もともと鶏肉に需要移行を甘受していた。そうすると、選択肢、代替案、としては鶏肉が唯一残されたものだった。

 さらに国産が多い鶏肉は、今後の、原料原産地表示にも合致していた。メーカーからしてみれば、日本以外を記載するよりも、日本と堂々たる表示のほうが、消費者のウケがよくなるのは明らかだった。

鶏肉の将来

 ムネ肉が、今年の一皿になったと冒頭で書いたが、今年はいたるネット調理方法紹介サイトでもムネ肉がフォーカスされた。さすがに、ムネ肉ステーキはどうだろう、とは思ったが、主婦のさまざまなアイデアがバリエーションを広げている。

 さらに日本の業者にとって明るいニュースは、近隣国でもムネ肉の需要が存在することだ。アジアではこれからも鶏肉需要が盛んになるだろう。おなじく、低脂肪、高タンパク質を求める性向は変わらないはずだし、ビジネスチャンスが眠っていると思っていい。

 最近でも鳥インフルエンザの発生が続いている。しかし、ほとんどの読者は知らないと思う。というのも、それぞれの対応が迅速で、被害が最小限にとどまっており、さらに、消費者のネガティブなイメージにつながっていない。むしろ新規需要が高まっている状況だ。

 とはいえ、業界としては、さほど供給量を増やすのに積極的だったところではない。というのも、これまでは供給量を増やすほど、とたんに価格が下落するといわれていた。なので、奇妙な表現をすれば、好景気に慣れている業界ではないのだ。またこの業界でも高齢化と人材不足は恒常的な問題で、どこも拡大には二の足を踏んでいる状態だ。

 これから焼き鳥など、さらに追い風が吹くには違いない。そこで供給側がやや準備不足であれば残念だ。また鶏肉は、牛肉や豚肉ほど、消費者に熟れていない印象がある。たとえば、単身者世帯向けに、小さな単位で鶏肉販売ができているだろうか。また、現在のSNS時代にあって、インスタ映えするような調理法を各社は積極的にPRできているだろうか。

 人手不足には機械化で対応しつつ、これまでになかった鶏肉の活用法をどんどん喧伝していく。これから、攻めの鶏肉になるためには、そういった姿勢が重要だ。