小売業者巨大化のメリット

 ドン・キホーテとアマゾンの優位性を説明した。

 ところで、そもそも、小売業が店舗拡大したり、あるいは異業種の買収などによって巨大化したりするのにどのようなメリットがあるだろうか。整理すると3つだ。

 1つ目は大量に仕入れることで、仕入先へ大きな影響力を行使できる点。これは前述の通り、大量に仕入れて安価にできるし、さらに取引条件を改善できる。ならびに家電量販店で見られるように、販売員の派遣を要請するなど、さまざまな便益を享受できる。もちろんプライベートブランドを生産するときにも有効に働く。

 2つ目はブランド力を向上させられる点。日本人に限らず、とりあえず有名な小売店から買って安心したいお客は多い。ならびに、従業員の採用や新規取引先を模索する際にも、自社が有名であれば、大変なアドバンテージがある。信頼力も、ブランド力に比例する。マスメディアへの宣伝広告も、有名企業の方が広告枠を取りやすいといわれる。

 3つ目は、内部コストの問題だ。考えてみれば当たり前で、10点の什器を選択する人的コストと、100点の什器を選択する際の人的コストを比較すれば、1什器あたりのコストはどちらが低いかは自明だ。

 店舗マニュアルを作るときにも。たった10店舗に向けて作るのか、100店舗に向けて作るのかで、1店舗あたりの費用も異なる。従業員教育やあるいは労務管理なども効率的だ。

アマゾンとドン・キホーテの肥大化の前に私たちは

 私はあくまで中立的に「小売業者は上位に入れば、そのままどんどんと太っていく」と述べた。ということは、しばらく、この2社の独走が続くのかもしれない。それはいいことか悪いことか。2社のファンならば、いいことでしかない。

 かつて松下電器産業は、それこそ水道のように網の目に張り巡らされた販売店を管理し、ナショナルブランドの基礎を築いた。そこから幾星霜。私たちは上位小売業者の肥大と、これまでにないプライベートブランドの瀰漫(びまん)を目にしている。

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 はたしてAmazonに代表される「合理」を極限まで進める企業だけが勝つのか?

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