(写真=AFP/アフロ)

 臨時国会で討議されている出入国管理法改正案。人手不足で苦しむ産業界からの突き上げに対してあからさまには移民解禁と言えない安倍政権の苦肉の法案である。早急な成立と制度設計を行い、労働力不足を解消したい政府・与党と、法改正が実質的な移民解禁であり、技能研修制度の改善を主張する野党の論戦が続いた。しかし、これまでの議論には、1つ欠けている論点がある。法律改正の結果、外国人が来日してくれるのかどうか、である。

 これまで日本における外国人の労働環境が、果たして彼らに魅力的だったか。法務省によれば、昨年7000人もの技能実習生の失踪が報告されている。なぜ、異国の地で失踪してしまったのか。それは、限度を超えた安価な労働力としての処遇が一因だろう。そして、この問題は、現在来日している外国人の問題だけにとどまらない。

海外に伝わる日本の悪評をどうするか

 失踪せずとも、厳しい労働環境でじっと耐えて働く外国人から祖国にどんな話が伝わるだろうか。電話やインターネットの通信手段がない時代であれば、日本における悪評は、来日した外国人だけにとどまる。

 しかし現在、海外との情報通信コストは劇的に低下している。日本の評判はリアルタイムに海外に伝わっている。安い賃金や、来日する前に聞いた話と異なる厳しい現実。国が違えば文化的背景も異なり、外国人には思い通りの生活ができない可能性も高い。そういった話は、タイムラグなく祖国の人々へと伝聞される。日本の受け入れ環境の問題が海外で流布されれば、将来的に受け入れ枠の拡大には阻害要因となるはずだ。

 技術革新のスピードが速い今日でも、企業における業務やサプライチェーンの維持には、まだ人手による労働が欠かせない。現在週28時間までしか働けない留学生の主なアルバイト先は、コンビニや居酒屋、弁当工場や清掃業務が多い。日本人の生活に欠かせないインフラである小売店や飲食店、食品製造業務とオフィスや工場の環境維持を担う仕事だ。見直しが叫ばれている技能実習制度でも、機械・金属や食品製造、建設関係における就労者が右肩上がりで増加している。

 2017年10月時点で外国人労働者数は128万人。過去5年で60万人も増加している。すでに日本のサプライチェーンは、外国人労働者なしには機能しないのである。したがって、実質的な論点は、外国人を日本へ受け入れるかどうかではなく、どのように受け入れるか、その方法論である。外国人だけの問題ではなく、日本人もおおいに関係し影響を受ける。

順調に受け入れが実現してもまだまだ足りない労働力

 入管法改正案にともなって示された試算では、2019年に4万7000人の外国人の受け入れを見込んでいる。そして5年間では、最大で34万5000人を見込んでいるという。1年で平均すると7万人弱だ。しかし、日本国内で不足する労働力は、パーソル総合研究所と中央大学の共同研究によると、2020年で384万人にのぼる。7万人は、不足数の1.8%に過ぎない。今回の計画が順調に実現したとしても、抜本的な人手不足解消にはほど遠い。法改正と共に、国内の労働力の効率的な活用や、さまざまな仕事の省人化を進めなければ、より豊かな生活どころか、現在の生活維持すらままならない。