「東芝Nextプラン」を発表する東芝の車谷暢昭会長兼CEO(写真:AFP/アフロ)

 業績見通しの発表で、調達改革によるコストダウン計画を語るケースは多い。しかしそれを実現するには、特に現在多くの困難が待ち受ける。グローバルマーケットにおける原材料の変動だけでなく、日本国内に目を向ければ人手不足や長期的な生産能力の減少傾向によって、調達改革はいばらの道である。そんな困難極まりない道を果敢に進むと発表した企業がある。

 11月8日、東芝は2018年7月~9月期決算と2023年までの中期事業計画を発表した。「東芝Nextプラン」と名付けられた全社変革計画は、調達改革も含まれる。2018年度対比で、2021年には調達改革の効果を約650億円捻出する計画だ。発表された内容を資料と発表時の音声データで確認すると、調達改革は道半ば、それもまだスタートに立ったばかりとの印象が拭えない。

具体性に乏しい

 発表された計画には、調達改革の効果を生み出す具体的な取り組み内容が、残念ながら読み取れなかった。直接材は取り組みが始まったばかり。しかし、間接材は効果が出ているとも説明があった。この計画全体の信憑性を高める意味でも、具体的にどのような活動によって効果が生み出されつつあるのかを示すべきであった。しかし、現実には示せなかった事情があったと推察する。

 同社の2018年度の調達総額は約1兆9000億円であり、この数値を基準に2021年には650億円を調達改革で生み出す計画だ。仮に2019年度から3年間と想定しても、単年度の効果額は220億を3年間積み上げれば計画は実現する。調達規模がほぼイコールと仮定すれば、単年度に1.2%のコストダウンを実現すればよい計算だ。しかし、東芝に限らず現在の調達環境はコストダウンの実現を阻む要因ばかりだ。

売り手の交渉力強化の影響

 まず、原材料や部品の価格に影響する市況と共に、強化された売り手の価格交渉力がある。原材料費の問題は、市況の価格変動による原材料費が高止まりだけが原因ではない。日本企業が輸入に依存している地下鉱物資源の多くで、採掘会社の寡占化が進んでいる。寡占化が進む理由の1つが採掘企業の価格競争力の強化である。売り手と買い手の対比では、売り手の交渉力は確実に強化されている。

 国内産業の空洞化の進展は、国内における雇用を減少させるだけではなく、国内で使われる鉱物資源の減少も意味する。購入量の減少は購買力の減退に直結する。売り手の価格交渉力が強化され、購入量も減少すれば、買い手に有利な交渉力は望めない。この点は、まず現在の事業内容で、購入量を維持できるかどうかが、調達改革実現の最低条件になる。

グループ全体の事業規模の縮小は間接材購買に影響

 購入量の維持は、直接材だけではなく間接材でも不安が残る。仮に、国内産業が空洞化しても、海外展開の進展や新たな事業の拡大によって購買力の維持は可能だ。しかし東芝は、2017年度に白物家電事業や医療機器子会社、本年度はドル箱の半導体子会社を売却し、グループ全体の事業規模を縮小している。調達改革の効果が出始めているとされた間接材は、グループ全体の事業規模縮小によって購買力の減退が危惧される領域のはずだ。どんな事業内容であっても購入する間接材で、今後調達改革の効果を生み出すためには、売却した事業にともなう、トータルボリューム減少をどうカバーするかがポイントになる。