11月4日、パナソニックが調達部門に勤務する90人以上の社員に対して、接待を受けることを禁じた社内規定に違反したとして、一斉に降格や出勤停止、けん責などの懲戒処分をしていた事実が明らかになった。海外出張の際に、部品を供給してもらう複数のメーカーから食事などの接待を数年間でのべ2000回以上受けていたとされる。

 パナソニックは過去に「クリーン調達宣言」をし、調達部門の社員は接待を受けないと宣言していた。宣言の中では「正しい調達活動の実践」として「公正な競争原理が働く健全な関係の構築」を目的に、あらゆる接待を禁止すると定めている。明るみに出た事実は、企業として高らかに宣言した内容に、従業員の行動がともなっていなかったために発生した。

 サプライヤーからの購入はどんな企業も行っている。サプライチェーンが国内のみならず国外へと広がり、海外企業との取り引きが増加すれば、こういったリスクはパナソニックだけではなく、どんな企業にも起こりうる。近年CSR(企業の社会的責任)を積極的にまっとうする姿勢を発表し、その内容をホームページに掲載している企業は多い。CSRの実践には社外関係者への明言と同時に、社内従業員への周知と彼らの行動への反映が不可欠だ。今回の問題が発生した原因の1つは、企業としての発言と勤務する従業員の行動が一致しなかったことだ。

 パナソニックと同じく、多くの日本企業は「接待を受けてはならない」と社外に宣言している。パナソニックの「クリーン調達宣言」を参照すると、会社が定める行事(=業務指示)を除いた一切の接待を禁止されていた。会食のみならず、ゴルフや旅行も行わないし、金券や贈答品の受け取りも一切禁止だ。

 一方で、ビジネスパーソンの多くは「社会常識の範囲内」の接待は認められていると思っているはずだ。事実、接待の具体的な方法やマナーを指南する本は、書店でも販売されている。今回も一部「接待は原則的に禁止」と報道されていた。「原則的に」だったら、例外があるのか。社会常識の範囲の内と外の線引きはどこにあるのか。議論を尽くしても明確な基準が決まらない問題だろう。このような接待に関する問題の防止が今、企業に求められている。

接待は受け手がいつも悪いのか

 接待にまつわる問題は、必ず接待の受け手として調達・購買部門が登場するのが日本の常だ。昨年話題になった、大手重工メーカーと町工場を舞台にしたTVドラマでも、調達部長がサプライヤーから賄賂を受け取るシーンがあった。日本では接待を受ける側が常に問題視される。

 しかし、接待を受ける側があるからには提供する側が存在する。サプライチェーン上は、同じ企業でも売り手と買い手の双方の立場になりえる。今回報道されたパナソニックのホームページを参照しても、接待や贈答を受けないといった表現は登場する。しかし、接待を提供しないとの文言は全く見当たらない。もし、接待を受けることがフェアーなサプライヤー選定の阻害要因になるのなら、提供を含めた接待のあり方を企業内のルールとして検討すべきだ。グローバルマーケットでは、接待を受ける側よりも提供する側に生じるリスクが高まっているのだ。

接待する側で高まるリスク

 米国の「連邦海外腐敗行為防止法(The Foreign Corrupt Practices Act、通称FCPA)」を御存じだろうか。この法律は、外国公務員に対する賄賂に絡んだ汚職を対象にしている。日本でも不当競争防止法の第18条に「外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止」として規定されている。FCPAは、日本よりも厳格に贈収賄に該当する事案を定義しており、賄賂禁止条項(Anti-Bribery Provision)と、会計・内部統制条項(Book and Record Keeping and Internal Control Provision)の2種類がある。前者は外国公務員に対して、賄賂の支払いや約束を行ってはならないと定めている。後者は「賄賂」を他の虚偽の名目によって計上することを防止する内容だ。「贈賄」には過剰な接待や贈答も含まれる。

 この法律によってこれまで摘発された企業は、その多くが米国以外の企業だ。日本企業も数社摘発されている。膨大な額の罰金を支払っただけではなく、関わったとされる日本人従業員が実際に収監されている。企業のみならず、個人への罰則もある。海外に取引先をもつすべてのビジネスパーソンにとって人ごとではないのだ。