(写真:Rex Features/アフロ)

 10月13日、ユニクロやジーユーを展開するファーストリテイリングが、2016年度8月期の通期決算説明会を開催した。柳井正会長兼社長から、決算説明とともに「今後の展望」が説明され「新しい産業を創る」ことが目標として掲げられた。目標は「お客様を中心とした、本当に要望される商品の『素材調達・企画・デザイン・生産・販売までの一貫したサプライチェーン』すべてを変革し、『情報製造小売業』になる」とされ「情報を商品化する」と説明している。企画やデザイン、販売だけではなく「一貫したサプライチェーン」のすべてを変革するのだ。取り組みのカギを握るのは「情報」。サプライチェーンに不可欠な「情報力強化」の重要性を踏まえた発言だ。

IT企業と競合する?!

 こういった内容は、柳井氏が日経ビジネスオンラインのインタビューの中で語った「いずれ、グーグルと競合する」といった言葉にもあらわれている。グーグルは「世界中の情報を整理し、世界中の人々が情報にアクセスできて使えるようにすること」が使命だ。整理した情報を活用して、まさに「情報を商品化する」企業といって良い。

 2009年ごろから顕在化している「産業のボーダレス化」によって、いわゆる「業界」といった「くくり」で競合企業を想定し、戦略を立案するのは、今や大きなリスクだ。事業内容上全く関係ないと思っていた企業が、突如競合企業化する。そういった傾向だから競合企業をグーグルやアマゾン・ドット・コムと想定するのだ。かつての異業種企業を含め激化する競合の中で、柳井氏の発言にある「素材調達・企画・デザイン・生産・販売までの一貫したサプライチェーン」を、ファーストリテイリングはどのように機能させるのだろうか。

日本一の影で忍びよる危機感

 2000年前後のフリースブームで大ブレークしたユニクロ。今年6月に発表された第49回日本の小売業調査では、衣料品の店舗売上高で2015年度は日本一を維持しているが上期は減益。下期に大幅な増益に転じ年間では増益を維持したものの、経費節減をグループ全体で実施し、効率経営への転換途上にある。ファストファッション各社は、消費者の価格を重視する姿勢に対応した結果、ブランドごとの違い・特徴が消失し、同質化が進んでいるとされている。加えてファーストリテイリングは、一時期と比較して業績が悪化と、思うように成長しない現実により、今回の取り組みへとつながる強い危機意識を持つに至っている。

 ファーストリテイリングは、ユニクロやジーユーのブランドを運営し、川上(原材料調達)から川下(販売)へとサプライチェーンを展開している。商品の企画から生産、販売までを1社で行うSPAと呼ばれる衣料品小売業だ。今回発表された内容は、川上から川下への「モノ」の流れに加えて、川下から川上への適切な「情報」の内容を変革、サプライチェーンにおける各プロセスにおいて新たな情報にもとづいて適切な意志決定を行い、効率的に事業を運営することを目指している。

 ファーストリテイリングは、サプライチェーンの広範囲を自社で管理しているため、強いサプライチェーンに必要な「統制力」を既に兼ね備えている。今回の取り組みは、もともとの強みを更に有効活用し、より強固なビジネス拡大へと結び付ける。例えば、従来とは異なる新たな情報から顧客の購買行動へ至る要因を分析し、最終的にサプライチェーンの管理・統制活動へ生かすはずだ。