いわば、中国の総力を動員し、この雄安新区市民サービスセンターがテクノロジーの先端地域となり、スマートシティーの実験場として、未来の中国を体現する役割をもつ。そのため、多数のテック企業が招聘され、AI、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの壮大な集積場となっている。

雄安新区市民サービスセンターの外観

 この雄安新区市民サービスセンターが実際のところどれだけ革新的な地域なのか、そして、その現実について、自分で確かめようと現地に向かった。北京から雄安の中心地まではクルマで3時間ほどかかる。そこで1泊し、雄安の中心地からさらに雄安新区市民サービスセンターまでは1時間ほどかかる。ガイドから「近づきましたよ」といわれたとき、そのあまりに牧歌的な光景にハイテク都市が存在するとは、ほとんど信じられなかったほどだ。畑仕事をする農民たち、レンガ造りの住居が並ぶなかで、野良犬たちが餌をもとめてさまよっている。

凄みと違和感の雄安新区市民サービスセンター

 雄安新区市民サービスセンターに行くには駐車場にクルマを停め、専用の無料バスで3分ほど揺られる必要がある。もし視察したい読者がいれば、この周辺地域は、日本語はおろか、英語もほぼ通じないので通訳かガイドを雇ったほうがよいだろう。周辺の住民や、観光地のついでに訪れた中国人たちでバスは満員になっている。

専用のバスで雄安新区市民サービスセンターを訪れる人々

 到着すると、その異質さに奇妙な感情にとらわれる。米国では、大企業の研究所が、唐突に農地のなかに出現することがある。その対比もかなりのものだが、その対比とも違う、表現できない違和感。農村のかたわらに、コンクリートと板金でできあがった異物が、周囲の景色と切り離されてそそり立っているのだ。

 木々が例外なく鉄棒で支えられ、さらには一つひとつがQRコードに連携したID管理がなされている。それはまるで、自然の老いすらゆるさないほどに、すべてを管理しようとする主張のようにも感じられた。

鉄棒で支えられた木々と木々に取り付けられたQRコード