あまりにも大きいブランドイメージの毀損

 神戸製鋼所では、近年高い付加価値を持つ高機能品の開発や販売に力を入れてきた。ユーザーが使用する最終製品とは異なり、部材などでは外観や形状では高い付加価値を表せない。さまざまな試験や検査を行って、試験や検査の結果を表す数値をよりどころに、これまで事業活動を展開してきたはずである。優位性を示すデータに不正や改ざんが行われた事実は、顧客が神戸製鋼所に不信感を抱くのに十分な内容だ。その影響は極めて深刻である。

 また経済のグローバル化によって、サプライチェーンが全世界に広がっている今、こういった不祥事の影響は当然グローバルに拡大・展開していく。高い付加価値と、メード・イン・ジャパンの品質に対するマイナスイメージのグローバル社会への広がりは、神戸製鋼所がこうむる影響だけではない。海外向けに販売する商品が、最終製品から中間財へとシフトしてきた日本にとって、今回の不祥事によって植えつけられたイメージダウンは大きすぎる。

 だからといって、すべての製品にトレーサビリティーの管理を課すのが得策とは考えられない。発生する費用が大きすぎて回収が見込めず、新たなブラック企業を生む温床にすらなり得る。今回の不祥事のもっとも由々しきは、トレーサビリティー管理を行っていたはずの多くの製品で発生している点だ。トレーサビリティー管理は、今回の解決策にはなり得ないのだ。明文化された仕様を守るのは、最低限のビジネスのルールであったはずだ。今回の不祥事は、売買における最低限の信頼関係を揺るがす事態なのである。