労働基準について

 次に、両者は労働者保護について、どう語っているだろうか。両者とも最低賃金の引き上げについて言及している。まず、トランプ氏は、最低賃金は10ドルになるようサポートすると語った。逆に最低賃金を上げない、という主張ならば、共和党の候補としてはわかりやすい。さらに本人の過去発言からも合致がいく。しかし、選挙戦が進むにつれて、最低賃金上昇賛成にかじを切ったほうが良いと判断したようだ。

 本人はビジネスマンだからグローバル競争では最低賃金の引き上げが企業活動にとってマイナスであるとは理解している。だからこそ、かつての発言は、最低賃金の引き上げはできないというものだった。

 一方で、ヒラリー氏は、オバマ路線を引き継ぐと見られており、12~15ドルの最低賃金を推進する立場だ。

 これは誰の立場で見るかによって意見が異なる。小売業経営者の立場から見ると、コストアップだ。しかし、小売業労働者の立場から見れば、拒絶する理由はない。米国小売業は4200万人もの労働者がおり、米国内でもっとも労働者数が多いセグメントの一つだ。関心が高まるのも無理はない。

結局どちらがふさわしいのか

 ここでまとめると、あくまでも小売業の経営側からの見方ではあるが、

*TPP:トランプ氏×、ヒラリー氏○
*法人税:トランプ氏○、ヒラリー氏?
*最低賃金:トランプ氏×、ヒラリー氏×

となるだろう。しかし、両者の意見が選挙戦を通じてずっと同じではないし、さらに、大統領に就いてからの政策現実度は、全くわからない。その意味で、小売業者の多くは、どちらにせよ、大きな未来図を描いてくれる候補を祈念するしかないだろう。

 ところで、両候補とも、70歳に近く、どれくらい米国の成長を描けるかはわからない。それを考えると、そのぶん、若きオバマ大統領のレームダック化に、さまざまな哀しみを抱く米国人がいるのは理解できる。目立つ論点が、TPPに賛成「しない」、あるいは規制を「強化する」といった、前向きでないものが多い。それが単なる私の印象にすぎなければいいのだけれど。