TPPにかける産業界の期待

 しかし産業界からは、特にアパレルなどからはTPPに期待する声が上がっている。ベトナムなどとの貿易で関税がゼロに近づけば、輸出入が盛んになり、メリットが多いと考えているからだ。考えてみるに当然で、既にTPP対象国で生産工場がサプライチェーンに存在する企業は、関税の撤廃が、そのままメリットとなる。このメリットを享受する企業として、コロンビア、ヘインズやナイキなどの固有名詞があがっている。さらに彼らは調達先としてではなく、同時にアジアを販売先とも考えているので、そのメリットは大きい。

 産業界全体ではこの大統領選挙について、どのような感情を抱いているだろうか。面白い資料がある。それは「US Election Business Outlook: Retail Executives See Significant Cause for Concern around Protectionism & Tariffs」という米GT Nexus社の資料だ。小売業の各社トップが気にしていることは、選挙戦で、各陣営が関税などを政治的に翻弄することだ、という。トランプ氏に反論した団体と同じように、小売業のトップ44%が保護主義の台頭による商品コスト上昇を懸念している。

 彼らは同時に原材料調達の価格上昇も懸念しており、その上昇分については、36%のトップが最終商品価格に転嫁すると答えている。この36%をどう見るかで意見はわかれるだろうが、消費者にとって不利益なのは間違いがない。

税制についての両者の見解

 次に税制についてだが、トランプ氏は法人税を35%から15%に引き下げると演説した。これについて、産業界は一定の評価を与えており、米国に投資する企業が増えるだろうという意見が多い。減税分が投資に回れば景気に好影響を与えるとしている。ただ、考えてみれば、減税に反対の企業は存在しないだろから当然の反応ともいえる。

 一方でヒラリー氏は、オバマ大統領が述べた、法人税を35%から28%にするというプランについて評価を明らかにしていない。トランプ氏の減税は専門家から言わせれば非現実的だとする指摘を受けて、ヒラリー氏は発言を慎重にしていると思えなくもない。一方で、ヒラリー氏は経済政策として大規模なインフラ投資を発表しており、それによって雇用増を目指すとしている。

 なお、米国の小売業協会(NRF)は、法人税よりも前に、売上税の公平化を訴えている。現在、米国では一部の州において、州をまたぐ取り引きには売上税がかからない仕組みとなっている。従って、リアル店舗よりもネットショッピング業者の方が税金が少なくて済み、それにより販売競争力を得ている。消費者にとっては1ドルでも安価な方で購入するのは当然だろう。

 しかし、税金の抜け穴によってリアル店舗の被害が拡大している。NRFは小売業の適正な利益の確保は、地域社会の保護にもつながるとし意見書を出している。小売業の中でも、地場に根ざした団体などは、新大統領に対して、引き続きこれら税の公平性を訴えていくものとみられる。この点について、クリントン氏は地方自治体の徴税をサポートすると述べており、アマゾン・ドット・コム嫌いで知られるトランプ氏は、アマゾンが税逃れをするためにワシントン・ポストを買収し(ネット企業に有利になるように)政治家にプレッシャーをかけていると述べた。