物流のプロフィットセンター化

 今回の取り組みでは、物流を「プロフィットセンター」と据えて大きな意識改革を行っている。コストセンターとはコストが集計され利益が集計されない部門を指す。当然ながら、コストに対してのみ責任をもつ部門になる。物流の中でも店舗や顧客へ届けるための商品化、梱包しタグ付けといった作業は労働集約的であり、コストセンターと呼ぶにふさわしい存在だった。しかし、有明倉庫の自動化によって達成する省人化率90%は、同社の過去の業務、そして競合他社との比較でも、劇的なコスト削減効果を生み、利益創出まさに「プロフィットセンター化」が可能になる。

 この取り組みは、社員の意識に、コスト発生部門から利益創出部門への転換を促す効果が大きいはずだ。事実、日本に差し迫る人手不足の波は、人手を使う業務のコストアップせざるを得なくなる。しかし、設備投資や改善によって従来の業務方法を見直せば、コストアップの抑制どころか利益拡大に貢献できる部門になるのである。

新たなテクノロジーの実用化

 これまで商品購入自動化に貢献する可能性がありながらも、正しく情報が読み取れなかったり、タグ付けにこれまで以上の時間を要したりで、なかなか実用化できなかったRFIDタグ。有明工場では、今年春の試験的な稼働から半年間で検品ゼロだったと報告された。実は、この話はにわかには信じがたく、先日ユニクロの店舗で商品を買ってみた。7点の購入でレジに設置された読み取りプレートの上に商品を並べると、商品情報の読み取りは一瞬で完了。レジの担当者も、総点数のみを確認していた。このスピード感と正確性が倉庫で実現していれば、倉庫作業の自動化、省力化に大きく貢献するはずだ。

 これまでRFIDタグでは、コンビニのローソンが実店舗で試験的な取り組みをおこなっていた。しかしタグがついた商品の写真を見ると、どう考えてもタグ取り付けの時間が必要であることがわかる。発生時間トータルで考えれば、レジでの会計に要する時間が短縮されたとしてもメリットがあるかどうか疑問であった。事実、ローソンが秋葉原に展開する新店舗では、スマホアプリとバーコードを使った決裁システムを採用している。ユニクロの場合、ほぼ商品は服飾か雑貨であり、コンビニとは商品が異なる点も幸いしたはずだ。そして、こういった取り組みが社内決定でサプライチェーン全体に実行可能な点こそ、情報製造小売業としてサプライチェーン全体のプロセスを管理するメリットである。

人手不足社会に強い物流網の構築

 最後に省人化率90%。出荷所要時間も8~16時間であったものを、15分~1時間へ劇的に減少させている。この点は、倉庫内の自動化システムがスムーズに稼働した前提だろう。どのようにシステムを止めないか。そして問題が発生したときにどのように対処するかが課題だろう。これからの季節、自動化システムで扱う服の1着あたりの容量も大きくなり、またクリスマスシーズンへ向けて取扱量も増えるはずだ。迫り来る繁忙期に、自動化システムの稼働をどのように維持するか、まさに「有明冬の陣」に勝利できるかどうかが、全世界に展開を計画する自動化倉庫の試金石になる。この点は、ダイフクにノウハウが存在するはずであり、今回の戦略的なパートナーシップ提携は、箱を作るだけではなく、円滑な倉庫運営まで含めた話であれば、乗り切れるはずだ。

 多くの企業にとって「省人化率90%」は魅力的なはずだ。しかし、この実現には当然ながら初期投資が欠かせない。ファーストリテイリングでは1000億の投資が明らかにされた。あらゆる業種で実現可能な取り組みだが、費用対効果を確保し、社員の意識を含めて物流部門を「プロフィットセンター」化できるかどうかが課題である。利益を創出する部門として物流部門を捉えられるかどうか、もっとも必要なのは、経営者の価値観の変革なのである。