(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 10月9日にファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、マテリアルハンドリング自動化の最大手であるダイフクの下代博社長と共に提携会見を行った。会見内容に基づいた報道では、その発言や取り組みに注目が集まる柳井会長兼社長のコメントばかり伝えられていた。また、提携内容を伝える報道でも、倉庫人員を10分の1にできるとか、RFID(Radio Frequency Identification)タグの誤認識がゼロだったとかいった内容ばかりが報道されていた。確かに、公開された工場全体システムの構築に、並々ならぬ苦労の存在は容易に想像できる。しかし、今回の記者会見には、もっと大きな歴史的な意味合いが存在する。

 これまで、人手不足を解決するために、さまざまな企業の物流分野で多くの取り組みが行われてきた。異なる企業同士や、中にはライバルである同業者とも提携し共同配送が行われているのが好例だ。しかし大手企業トップが、物流改革をサポートしてくれた企業のトップと共に記者会見に臨んだ例があっただろうか。少なくとも筆者には記憶がなく、これだけ大々的に報道されたケースも初めてのはずだ。

 それだけファーストリテイリングが、サプライチェーンの改革における倉庫内物流を重視し、抱えた問題の解決が自社のリソースではできなかった証しである。今回の主役は、ダイフクの下代社長といってもよいくらいだ。物流は工場や倉庫から店舗や顧客への配送が注目される。しかし、一部門の非効率がサプライチェーン全体の効率向上には致命傷になる。ファーストリテイリングでは、店舗販売だけではなく、インターネット通販の拡大を目的に、規模では世界最大級と言われた有明倉庫を立ち上げた。しかし、ただ大きいだけの倉庫に、店舗や顧客へ効率的に配送する仕組みはなかったのである。

順調にはスタートしなかった有明倉庫

 今回、報道陣に公開された有明工場の稼働は、2016年までさかのぼる。稼働した当時、倉庫内は公開されなかった。いや、公開できなかったというのが正しいだろう。当時の決算発表会によれば、有明倉庫の移転によって物流レベルが低下し混乱したとさえ説明していた。大きな入れ物は作ったものの、実際の倉庫業務の効率的な運営にはほど遠かったのである。

 効率的なサプライチェーンの確立には、製造と販売、双方をつなぐ円滑な情報流通と物流の確立が欠かせない。ファーストリテイリングは柳井会長兼社長が唱える「製造小売業」から「情報製造小売業」への変革でも着実に歩みを進めてきた。まず、2015年6月には、先進的な消費者サービスの開発へ向けてアクセンチュアとの協業を発表。そして今年7月には、ニット機械製造の島精機製作所と中長期的な商品開発を目的とした商品開発をめざす戦略的パートナーシップを結んでいる。「製造」と「情報」では着実に手を打ってきたのである。

「情報製造小売業」実現にひた走るファーストリテイリング

 有明倉庫の改革では、2016年12月からダイフクとの連携がスタート。記者会見でもあった通り、通常は3年必要な自動倉庫の稼働を、ほぼ半分の1.5年でスタートできたのは、ダイフクのノウハウによる貢献が大きいはずだ。「情報製造小売業」の言葉には登場しないものの、製造と小売りをつなぐ物流を加え、グローバルマーケットにおける展開の加速を実現するのである。

 今回のファーストリテイリングの取り組みは、すべての日本企業にとって改善のヒントが満載されている。大きく3つのポイントで説明しよう。