さらにテスラは、この物流地獄に対応すべく、いくつかの発表をした。まず、この物流地獄の原因は、極端なほどのトラック不足だという。そもそもテスラの生産量が急増しているので、やむない側面がある。そこでテスラは自社版の運搬車生産に着手しはじめた。これはより多くの完成車を運搬するためのものだ。

 商品はお客のもとに届かなければ意味がない。一難去って、また一難。テスラの今後の対応に注目したい。

ボッシュのハブ間トラック自動化

 ところで、このテスラの問題の最中、独ボッシュはトラックの自動化を発表していた。これは、倉庫間の運送を自動化するものだ。

 自家用車の自動運転が注目される一方で、物流の人材不足はどの国でも顕著だ。運ぶニーズは高まっている。テスラの問題が示すとおり、商品をやっと生産しても、それを運べないのである。

 米国では5万人のトラック運転手が足りないとされている。しかも今後10年で、この3倍が不足する可能性がある。まだまだ消費者に直接、商品を渡す配達員は人間でなければならないかもしれない。ただ、ハブ間の運送であれば、自動車両活用の余地がある。

 また、現在の物量よりも、世界では2003年までに道路貨物の量が1.5倍ほどになるかもしれない。事故もそうだが、環境汚染や、効率化を含めて、対応が急務だ。なるほど、ボッシュはこの辺がさすが抜け目がない。

イーロン・マスクCEOはどうなるか

 ところで、米中の貿易戦争で、中国からの輸入品に多額の関税がかかる中、中国への投資を進めてきたテスラならびにイーロン・マスクCEOはどう奮闘していくだろう。自動車業界の風雲児の行く末が気になるのは私だけではないだろう。

 これまで自動車産業では、既存メーカーが牛耳ってきた。もちろん、それは技術と資金力が必要なために、新規参入が難しい側面がある。ただ、新規参入しても、あまり芳しい結果になっていない。

 マイケル・J・フォックス主演の有名映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するデロリアンは、もともと米ゼネラルモーターズ出身のジョン・デロリアンが創業した。しかし、創業者が不可解なオトリ捜査を受け、すぐさま倒産した。もちろん、オトリ捜査が陰謀だったとまではいわない。ただ、その注目度と裏腹に、あっけない幕切れだった。

 また、米フォード・モーターを辞めたプレストン・トーマス・タッカーがはじめたタッカー・コーポレーションがある。これは圧倒的な技術力で市場を制覇しようとした。しかし、同社も、既存メーカーから無数の技術訴訟を受け、そして、市場からの撤退を余儀なくされた。

 自動車産業で、既得権益者に闘いを挑み、そして散った先人たち。

 テスラも、歴史的反復の運命なのか。あるいは、勝利者となるか。

 個人的にはイーロン・マスクCEOを応援したいと思いつつ――。

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