中小企業にこそメリット

 中小企業では、経理や総務といった部門が兼任で調達窓口になっている場合が多い。Amazon Businessを活用すれば、購入実績のリポートをグラフや表で見やすく表示し、アカウントやグループ、ユーザーごとの購買履歴が管理できる。何をどのくらい買ったかを「見える化」するサービスが提供されるのだ。また、稟議書に必要な見積書のダウンロードもできる。意思決定のプロセスはユーザー側の都合に合わせ、それ以外のプロセスは個人の買い物の経験を生かしたプロセスを流用し活用できる点が、Amazon Business最大の武器なのである。

 中小企業では、営業や生産といった売り上げに直結する業務に比べ、調達まで管理の目が十分に行き届かないのが実情だろう。購入実績のデータ化や分析結果が提供されれば、新たな損益改善のヒントが得られる。多くの企業が人手不足に苦しむ現在、こういったサービスは、人的リソースに乏しい中小企業にとって大きな価値があるはずだ。Amazon Businessによって、企業における外部購入方法の変革が実現すれば、調達部門で大きな効率化が実現するのだ。

Amazon Businessの課題

 もちろん明るい話ばかりではない。Amazon Businessは課題もある。まず、個人のプライム会員と同じサービスを企業向けに提供できるかどうかだ。Amazon Businessのアカウント開設を思い立つ人は、個人の買い物でアマゾンの利便性を実感している人が多いはずだ。ヘビーユーザーはプライム会員となり「お急ぎ便」「お届け日時指定便」によって、欲しいモノが待たずに手に入る「スピード」を享受している。現時点では、注文金額に関わらず無料で利用可能だ。しかし「ビジネスプライム配送特典」を説明するページには「期間限定」とただし書きがついている。こういった利便性の高いサービスが継続できるかどうか、今後のサービス普及のカギになる。

 また「プライム配送特典」が機能するのは、十分な供給能力を確保し、計画通りに配送することが前提だ。供給能力が不足したり、配送力に問題が生じたりした場合、企業活動に大きな影響を与える。個人の買い物の場合、配送の遅れは我慢し、どうしても必要な場合、コンビニエンスストアで購入すれば急場しのぎは可能だ。しかしAmazon Businessの普及によって、地域の商社や販売店が打撃を受けると、どこでも買えるマルチソースだったはずが、 アマゾンの都合に左右される事態も想定できる。企業における新たな手待ちである「アマゾン待ち」が生じるかもしれないのだ。

Amazon Businessが示す2つの戦略

 そしてAmazon Businessは、すべての企業に2つの戦略の方向性を示す。もしAmazon Businessのホームページに掲載される商品を製造・販売している場合、ホームページ上に競合他社と比較した結果が示される。 ホームページ上で提供内容に優位性がないと判断された場合は売れない。まず販売対象の優位性を確保し、加えてホームページ上で優位性を分かりやすく伝える表現力が求められる。

 もう一つは、Amazon Businessのホームページに掲載できないような製品やサービスの提供だ。この場合は従来と同じように営業部門が販売戦略を立案し、製品やサービスの企画を立て、販路を確保していく必要がある。

 この2つの戦略の方向性は、調達部門にも適用できる。ホームページに掲載できるような商品の購入は、商品の選定を社内の各部門に任せてしまう。調達部門はアカウントと購入実績の管理に注力する。加えて、個人の買い物では「まあいいや」と言えても、法人では簡単に済まされないような納入に関連したトラブル処理に特化する。

 そしてもう一つ、Amazon Businessのサービスは享受しつつ、調達部門がAmazon Businessに依存しない取り組みが欠かせない。優位性を保つためにAmazon Businessで買えない製品やサービスがより重要になってくる。そういったユニークな購入品を探す「目利き」能力は、調達部門の創出する付加価値を決定するファクターになるはずだ。魅力的なサービスだからこそ、業績の拡大に貢献する活用法を、営業部門と調達部門が模索し実行しなければ、アマゾンに利用されるだけの会社になってしまう。便利なサービスは、使用するメリットを自社の業績へ最大化するための方法論が重要なのである。

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