9月20日、アマゾンジャパンは、法人・個人事業主向け購買サービス「Amazon Business」を開始した。このサービスは、日本企業における購買作業の業務効率を向上させると同時に、営業や調達の仕事を奪い、雇用を揺るがす事態へ発展する可能性を秘めている。ビジネスパーソンなら注目せざるを得ないサービスだ。

 Amazon Businessが大きな可能性を秘めているのは、アマゾンが個人向けインターネット通信販売で、圧倒的なシェアを確保している点に尽きる。これまでのアマゾンのユーザーであればAmazon Businessを使用するときに、新しい検索の仕組みや注文方法を覚える必要がない。ユーザーがアマゾンを使いこなしてきたスキルが、そのまま活用できるのだ。アカウントを切り替えるだけで良い。これまでの使い勝手の良さそのままで、法人アカウントで購入代金の請求書払いもできる。日本の法人ユーザーにはうれしい対応だ。

取り扱い商品数の多さはメリットではない

 他の法人向けインターネット通信販売と比較するとき、Amazon Businessは取扱商品数の多さがメリットだと言われているが間違いだ。好みを探求し、他人との違いを実現する個人の買い物では、商品の多さが魅力になる。しかし法人の購入では、例えばオフィスサプライ品を、そこまで「こだわり」をもって選定しない。安定した品質と価格に魅力があれば十分だ。アマゾンは個人向け販売を拡大し、消費者が求めるQ(品質)C(コスト)D(納期)には応えてきた実績がある。売れ筋商品をデータから読み解く分析力も、消費者向けサービスで培ったノウハウの蓄積がある。

 他の法人向けサービスと比較したとき、Amazon Businessの最大の優位点は「購入手続き」だ。個人で買い物をするときと、ほぼ同じ画面推移で購入が完了する「手順の親和性」が、企業の購入担当者にとって心地よく、「買ってみよう」と思わせる「動機」になるのだ。

企業における購買の性質

 ふだん行っている買い物では、買う行為そのものが楽しい買い物と、必要に強いられて行う買い物がある。楽しい買い物の場合、目移りするような取り扱い点数の多さは消費者にとって大きな魅力だ。多くの商品から自分の好みに合う製品を見つけたとき、嬉しさを感じるだろう。しかし生活に必要な買い物の場合、品ぞろえよりも欲しいモノのページを1秒でも早く見つけられる「利便性」を求めるはずだ。企業の購買では、1品目の購入に必要な時間を短くする工夫が欠かせない。Amazon Businessにおける買い物は、個人における生活に必要な買い物に該当する。少しでも購入手続きに費やす時間は短い方が良い。

 購入手続きに要する時間の短縮は、地域に密着して企業運営に必要な商品を提供してきた商社や販売業者に大きな脅威になる。インターネット通販では販売の難しい専用品や特殊品以外は、御用聞きに代表される人間の営業が不要になるだろう。営業担当者がいなくても、インターネットのホームページがユーザーの要求を満足する情報を提供する。ホームページにおける情報は、個人の買い物で購入決定に値する情報量が確保されていると、ユーザーは実感している。

24時間待機する営業パーソン

 そして何よりAmazon Businessは、欲しいとき=欲求の高まった瞬間を逃さない。アカウントを開設すれば、デスクのパソコンだけでなくスマホでも購入できる。同類の商品の比較検討も可能だ。複数のサプライヤーから何枚もの見積書を入手し、自分で比較表を作成しなくても良い。これは購入担当者にとっては大きなメリットだ。

次ページ 中小企業にこそメリット