知られざる業界の状況
そこで、結論を見てみよう。下のグラフは、「法人企業統計調査 時系列データ」からのもので「輸送用機械器具製造業」を2004年度から2015年度まで抽出してみた。

まず、グラフの見方であるが、右軸も左軸も日数を示している。オレンジと青は、左の軸。灰色は右軸だ。
上記のカテゴリで見ると、グラフ線の灰色「差異」はまだプラスを示している。繰り返すと、差異はプラスのほうがよい。資金繰り的に、お金が早めに入ってくるからだ。

次にティア2も、2014年度を除けば、なんとかプラスを確保している。
しかし、問題は、次のものだ。ティア3メーカー以下を見てみよう。

リーマンショック以降、差異は慢性的なマイナスが続いている。グラフを直感的に見てもらっても、売掛債権回転期間が買掛債権回転期間を上回っている期間が続いている。
細かな提案
問題なのはティア3メーカー以下だ。このクラスがもっとも厳しい闘いを強いられている。したがって、いわゆる輸送機器関連企業といっても、現状では一様に問題ではない。下請け企業といってもすべてが同じではない。産業として見たときに呻吟しているのは、資本金の低い企業が経営を圧迫させているのだ。私は公的機関が救いの手を差し伸べることには、いささか賛成に逡巡する。しかし、輸送機器関連企業を救うのであれば、対象はこの層にターゲティングすべきだ。そして、さらに、救済のために、やや具体的な手法を提案したい。
- 自動車メーカーへ指導しても、取引条件改善効果は生じないかもしれない。むしろ事実上のティア2とティア3間の取り引きを注視したほうが良い
- 本来は自動車メーカーがティア3までのすべての取引公正化に努めるべきだろうが、事実上、そこまで期待しても現場は手が回らない。少なくとも、上記のグラフのような「具体的」データを自動車メーカーに配布したほうがよい
- ティア2とティア3間の取り引きとはいっても、下請代金支払遅延等防止法の適用外になる可能性がある。すなわち発注者側が資本金3億円未満で、下請法外のケースが多々考えられる。よって、より倫理観に訴える形での取引条件改善をアピールすべきだろう
- ただ、一方の問題は、国内生産の縮小にある。取引条件の改善だけで、この状況を好転させることはできない。生産物が減少したぶんを埋める代替生産を業界全体で探す取り組みが急務だ
- その意味で、中小企業が新分野で挑戦しようとするとき、設備導入時に支障が残る。中小企業が設備を導入しようと思っても、法定耐用年数が問題となる。具体的には実態の使用年数にたいして、法定耐用年数が長い。経費化に時間がかかる。大幅な圧縮を期待したい
零細企業経営者の一人として、極小製造業者へ心からエールを送る。
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