しかし、これを因数分解してみる。この中で、いわゆる「日本メーカー」を抽出する。さらに、その生産場所を、国内と海外でわけてみる。

日本メーカーの自動車の生産台数(単位:万台)
日本メーカーの自動車の生産台数(単位:万台)

 伸びているのは海外生産だ。国内生産は、せいぜい横ばいかじりじりと右肩下がりになっているのがわかるだろう。海外に需要があれば海外に出て、海外でサプライチェーンを構築せよ、と語る人がいる。しかし、現状では、いわゆる資本金5000万円に満たない中小企業が海外に進出している比率は、わずか0.7%程度にすぎない(「海外事業活動基本調査」と「工業統計調査」による)。

実態の調査

 さきほどは引用する調査の関連で、恣意的に資本金5000万円基準を使用した。次に、ここでは新たに資本金基準を設定して検証してみた。

*資本金10億円以上:アセンブリメーカー、ビッグサプライヤー(ティア1メーカー)
*資本金1億円以上~10億円未満:ティア2メーカー
*資本金1億円未満:ティア3メーカー以下

 そこで、次の計算式を使い、簡易的に試算した。

*買掛債権回転期間:(買掛金+支払手形)÷売上原価×365
*売掛債権回転期間:(売掛金+受取手形)÷売上高×365

 説明不要かもしれないが、買掛債権とは、その企業が生産に必要な製品や原材料などを取引先から信用取引で調達する際の未払金だ。これは未払金であるからして、当然ながら、買掛債権回転期間は長い方が良い。

 そして、売掛債権とは製品を販売したにもかかわらず、取引先から受け取っていないものだから、当然ながら売掛債権回転期間は短い方が良い。

 さらに、

*差異:買掛債権回転期間―売掛債権回転期間

を考えてみよう。この値がプラスだったとしよう。その場合、外部企業へ対価の支払い期間は長く、一方で、顧客からお金は早くもらえるのだから、経営は安定する。逆にマイナスになっているのだとすれば、外部へ早く支払わねばならないのに、顧客からお金をもらうタイミングは遅い。だから経営は不安定化する。

 また、同時に、売上高が減少傾向にあるとき、すなわち売掛金や受取手形が減少傾向にあるとき、この差異は悪化していく。

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