しかし下請け企業が今回の要請を根拠に一方的に主張するだけでは獲得は難しいだろう。獲得するためには武器が必要だ。下請け企業はまず、今回の要請に伴ってルールの明確化を要求すると共に、厳格適用される下請け代金法と下請け振興法の条文を理解すべきだろう。

 この法律は、大手企業が順守しなければならない法律だ。大手企業と下請け企業では、コンプライアンスに関して大手企業の担当者の理解度の方が高い。下請け企業は、弱い立場をサポートする内容が条文化されている事実を理解すべきだ。そして、自社と顧客の取り引きが、法律で規定された下請け取り引きに合致するのかどうか。その上で、違反に該当する取り引き実態の有無を確認して、問題があれば改善をうながさなければならない。せっかく制定されている法律を武器として活用すべきなのだ。

 加えて、下請け企業もより高い付加価値の創出に取り組まなければならない。要請によって半ば強制的に売価や取引条件が改善しても、購入側から見た付加価値が拡大しなければ、一過性の取り組みに終わってしまう。今回の要請をきっかけに、下請け企業側でも新たな取り組みによって結果=付加価値、を生み出さなければならない。

「3何」から脱却せよ

 筆者は、調達・購買の現場で、多くの下請けと呼ばれる企業とビジネスを行ってきた。その中で実感するのは、ビジネスの根本にあるはずの創意工夫に必要な思考を停止してしまった下請け企業の多さだ。これは、発注側である大手企業の罪も深い。大手企業の指示に従順な下請け企業だけを求めてきた結果だ。

 しかし大手企業ですら今、市場のニーズに対応できず苦しんでいる。今、大手企業は答えを持っていない。その現実を、日本の下請け企業は重く受け止めるべきだ。下請け企業も答えを探し、みずから自社の強みを研ぎすまさなければならない。

 しかし現実は理想に程遠い。競争力を高める企業本来の姿とは程遠い下請け企業の実態を象徴するのが、営業パーソンが商談中に口にする3つの「何(なに)」だ。まず面談が始まった際にはこうだ。

何かありませんか?

 これは、自社にできる仕事がないかを聞く言葉だ。発注企業のバイヤーが、下請け企業の事業内容を理解していればまだ良い。しかし新しい顧客を開拓する場合は、もっと具体的に提案を行うべきだろう。これは仕事内容を相手に委ねる言葉にほかならない。まさに思考停止を象徴する言葉だ。こういったセールストークで受注が得られると思っているのがそもそもの間違いだ。そしてバイヤーから具体的な仕事が引き出せないと、こんな言葉が飛びだす。

何でもやります

 明確な仕事内容が発注側から提示されない場合、何でも対応する積極的な姿勢を前面に出すからだろうか、こういった言葉が発せられる。しかし、肉屋に魚を買いに行かないのと同じく、専門的なノウハウを持ち、かつ納期や品質の管理の勘所を押さえた下請け企業へ発注したいと思っていれば、こういった言葉で心動かされるバイヤーはいないだろう。「何でもやります」と主張する相手は、総じて自社の強みを言葉で表現できない。自社の強みを突き詰める取り組みを行っていないからこそ、意気込みだけを表現するために使う言葉だ。

何かあったらよろしくお願いします

 これは商談の最後に繰りだされる。話をしてみても、自社の優位性を伝えられずに、何も手応えがなかったとき、最後に後からでも思い出してくれればと期待を込めて発する言葉だ。しかし、どんな優位性をもっているかもわからない企業を記憶にとどめておくのは非常に難しい。この言葉こそ、発する側にだけ確証の全くない期待を残す言葉だ。そんな期待は必ず裏切られる。

 全国では、毎週どこかで発注側と受注側をマッチングさせる商談会が行われている。多くの商談会は、都道府県に代表される地方自治体が主催している。実際の商談では「3何」に代表される言葉によって、発注側には手応えを感じず、受注側が自己満足で終わる商談が実に多いのが実状だ。