ただ、「ここは迷いながら書く」と述べた理由は、強引に訴求しないのが日本企業っぽくていいかな、とも思うからだ。これは、まさに企業の考え方しだいだろう。

何のための名刺

 私が考えるに、やっと足を運んでくれた訪問者への対応が問題だ。前回の記事では、キャンペーンガールへの疑義を述べた。内容は、キャンペーンガールがいても、集客の効果は変わらないのではないか、というものだった。しかし、好みがあるだろうから、断言は避けた。

 ただ、あえてもう一つ指摘しておきたい。

 キャンペーンガールだけではなく、男性がチラシを渡そうとするときでも、多くの場合は、下の図のようにチラシを横に持って渡そうとする。

束ねたチラシを横に持って渡す例

 これで「どうぞ」とチラシを渡されても、内容がわからない。本来は、その渡そうとするチラシを立たせて、自分の体と水平方向に持ち、どんな内容のチラシを渡そうとしているのか、相手に知らせたあとに配らねばならない。

チラシを水平方向に持てば内容がわかってもらえる

 なおこれは、展示会で単に立っているときも同じだ。チラシを横に持っていると、通り過ぎるひとたちには内容がわからない。チラシの内容は、過ぎゆくひとたちに見せるように、立たせてもっておかなければいけない。

 さらに、キャンペーンガールなどがそのようにしてチラシを配り、それと交換に集めた名刺が、ほとんど有効活用されていないことも問題だ。私は以前「私が調達・購買関係の仕事だから無視されているのか」と勘ぐった。しかし、同じく同伴した設計・開発者にもアプローチはないのだという。少なくとも、アプローチがないケースが大半らしい。

 いったい何のための展示会なのだろう。わからない。

 たとえば、自動車メーカーに食い込もうと思えば、少なくとも5年はかかる。なぜならば、すぐさま取り引きが決まったとしても、開発から納品まで5年はかかるからだ。だから、展示会でつかまえた自動車メーカーの調達・購買担当者や、設計・開発者と、そもそも長期的な関係になることを覚悟せねばならない。たぶん、両者の担当者も替わっていくだろう。それくらいロングスパンで考えなければいけない。

 顧客価値の考え方に、LTV(Life Time Value)がある。これは短期間ではなく、中長期的な顧客価値を志向するものだ。たとえ展示会の出展に100万円かかったとして、さらに、そこでつかまえた顧客から年間10万円ぶんの注文しかなかったとする。ただ、それは単に1年にすぎない。10年、20年、いや30年と取り引きをすれば、当初の100万円は、むしろ安いものだ。

 アプローチして、いますぐ客になりそうになければ、数カ月おきでも、半年おきでも、定期的にコンタクトすればいい。機が熟したら、そのうち声がかかる。せっかく名刺を集めるのだから、それ以降に、多少は何かやれよと私は思うのだ。

 少なくとも毎回のように名刺を残していた私は、何のための展示会だろうか、と考えていた。

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