メリットの訴求性

 ちなみに、ここは迷いながら書く。

 海外の展示会に行くと、企業がメリットを直接的に書いているのに驚く。たとえば、日本企業が工場内で使える掃除機を発明したとする。繰り返しだが、これはあくまで例だ。そうすると、「清掃時間を10%カット」とPRするかもしれない。

 ただ、これは弱いのだ。なぜかというと、通常の頭脳を持ったひとであれば。「清掃時間を10%カット」=「人件費が軽減」=「経営の業績向上」という方程式を思い浮かべるかもしれない。しかし、「清掃時間を10%カット」の何がメリットなのかわからないひともいる。

 だから、「清掃時間を10%カット」よりも、「工場の管理費を年間2億円削減できる」のほうがわかりやすい。つまり、その製品ができること、だけを述べるのではなく、その結果にあるメリットで訴求せねばならない。私が海外の展示会で驚く、といったのは、この効果をうまく語っている点だ。

 それはもちろん日本との国民性の違いもあるかもしれない。というのは、私が感じるに、「その製品が技術的にどうすごいのか」を探求するケースは、日本以外はさほどない。それよりも「その製品を使って、どれだけ儲かるのか(あるいはコストカットできるのか)」と、その先に興味をもたれることがほとんどだ。

 以前、「タイムレコーダーの置き方が悪いと、年間6250万円の売上を失いますよ」と聞かされた。タイムレコーダーとは、従業員の勤怠時間を管理する、おなじみのあれである。

 タイムレコーダーは、1分単位で労働者の勤務時間を記録する。雇用主は、同じく1分単位で労働者に勤務対価を支払う可能性がある。そのタイムレコーダーがロッカーの休憩所の近くにあったら、ダラダラと休憩したあとにタイムカードを挿入するかもしれない。

 ある企業では、1日に概算で、労働時間を引き伸ばされて損失した費用が1万2500円だったらしい。その1万2500円は粗利益から消えゆくコストだから、もし、経常利益が5%程度の会社ならば、1日に

 1万2500円÷5%=25万円

の売上を喪失しているのと同じことになる。さらに、会社が年間に250日の稼働日があるとすると、

 25万円×250=6250万円

の売上が消えているのと等しい。これが、「タイムレコーダーの置き方が悪いと、年間6250万円の売上を失いますよ」というマーケティング・フレーズの根拠だった。

 だから、常に「どれだけトクするか」を直接的に書いたほうが、特に海外からの訪問者にはウケるだろう。少なくとも、効率化の先をPRすることは失念しないほうがいい。