どうやって対応費用を捻出するか

 すべてのケースに共通しているのは、街路樹や橋梁、道路は公共財であり、その管理は、国や地方自治体に委ねられている点だ。最近テレビでは「高速道路リニューアルプロジェクト」のコマーシャルが流されている。しかし、対象となっている高速自動車国道は、日本の道路の0.7%にすぎない。都道府県や市町村が管理する道路は、日本の道路全体の約95%を占めている。橋梁も、都道府県と市町村は全体数の87%を管理している。日本の高度なサプライチェーンを支える道路網の9割は、地方自治体によって管理されていると言って良い。

 地方自治体によって道路や橋梁の管理が正しく行われ、メンテナンスも実行されていれば問題は無い。しかし、例えば実際に行われている橋梁の点検は「遠望目視」が主流であり、点検の「質」に疑問が投げかけられている。また、点検やメンテナンスに必要な費用の捻出も課題だ。

 街路樹の例では、問題のある木(危険木)を伐採し、新たに植え替えれば良いのだが、予算の確保ができずに進んでいない。そもそも街路樹の維持管理に必要な予算は、樹木の剪定や消毒に対してであり、植え替えを想定したものではない。

復旧能力確保が課題

 街路樹の倒木や橋梁の崩壊といった問題は、すべての木や橋で発生するわけではない。局所的に発生するだけなら、復旧にもさほど時間がかからないと思われるだろう。しかし、こういったリスクの顕在化を元へ戻すリソースである「災害対応力」が不足している。

 各地域における災害復旧を担う建設業者は今、空前の人手不足に悩まされている。自治体と「災害協定」を締結する、全国の建設業者の数も減少している。かつては建設業者が保有していた災害復旧に必要な重機も、現在ではリースが主流となり、突発的に発生する災害による被害を解消したくても、重機がなくてできないケースが起こっているのだ。

台風リスクへの対処

 台風が大震災と異なる点が1つある。台風は、ある日突然日本の国土上や、その近海で発生する可能性が極めて少ない。3連休に日本を襲った台風18号にしても、発生したのは9月9日だ。したがって、日本を襲う前にある程度時間があり、準備が可能だ。まず、強い風と雨の直接的な被害は、サプライチェーンを一時的に止めれば回避できる。最近大きな台風が襲うとき、あらかじめ電車の運行が止まるケースがある。こういった取り組みによって、台風の直接的な被害から逃れられる。

 近年の台風は、3時間ごとに72時間先までの予測情報の入手が可能だ。まず、サプライチェーンの維持よりも、サプライチェーンを支える人命の安全確保が最優先だ。台風の影響が強まる前に、サプライチェーンを一時的に止め、被害の発生を食い止めたい。問題は、台風に襲われた結果、発生した被害によってサプライチェーンを止めざるを得ないケースだ。今回指摘した道路にまつわるリスクは、輸送ルートを複数確保すればリスクヘッジの可能性が生まれる。

 最近では台風による影響だけではなく、大雨による土砂災害の発生で道路が寸断され、集落が孤立するケースが発生している。こういった事態には、震災発生時と同じように、孤立が解消されるまでに必要な生活物資の準備が欠かせない。

 昭和34年に日本を襲った「伊勢湾台風」では、4697人もの人命が失われた。紀伊半島に上陸したのは9月26日である。まだまだ台風シーズンの真っただ中である。日本から遠く南の海で発生し、日本を襲うまでに少なくとも数日間の猶予があるからこそ、人命とサプライチェーンを守る準備が欠かせないのである。