甚大な被害を及ぼしたハリケーン「ハービー」(写真=ロイター/アフロ)
甚大な被害を及ぼしたハリケーン「ハービー」(写真=ロイター/アフロ)

 8月以降米国では相次いで大きなハリケーンの直撃を受け、各地に大きな被害が出た。ハリケーン「ハービー」が上陸したテキサス州には、LPGの生産や輸出に必要な設備が集中している。日本は米国産LPGの輸入シェアが40%を超えている。ハリケーンの上陸によってLPGの輸出は停止し、価格とサプライチェーンに影響を及ぼしている。日本における企業活動や、市民生活に大きな影響は出ていないかもしれないが、ハリケーンや台風もサプライチェーンに少なからぬ影響を与える。

 敬老の日を含めた3連休、日本列島を台風18号が襲った。九州、四国、本州、北海道に上陸し、各地に大きな台風の爪痕を残した。日本の場合、特に夏の終わりから初秋にかけて、太平洋の高気圧が衰え出すタイミングで日本に接近し、上陸する台風が増える傾向がある。海面から発せられる多量の水蒸気によって発達するため、地球温暖化による海水温の上昇は、台風の勢力を強くする影響を及ぼす。台風による強い風と大雨が、日本のサプライチェーンにどんな影響を及ぼすだろうか。

街路樹の老朽化問題

 まず、全国に675万本あるといわれる街路樹が、台風による強い風によって倒れ、サプライチェーンを寸断する原因になる可能性を指摘したい。街路樹が盛んに植えられたのは高度成長期だ。それから50年が経過した現在、台風による強い風が吹かなくても街路樹が倒れる事故が全国で発生している。街路樹に「老朽化」が進んでいるのだ。

 今回日本を襲った台風18号でも、全国で倒木による被害が報告されている。2004年に多数の台風が上陸した際、全国で倒れた街路樹が2万4000本あったと報告された。今回の台風でも、新幹線が倒木に衝突したり、送電線に倒れて停電が発生したり、高速道路を倒木が塞いだりといった被害に見舞われている。

 街路樹は今、そもそも強い風がなくても倒れるリスクが問題になっている。台風による強い風は、こういったリスクの顕在化を進める可能性が高い。老朽化した街路樹が多く倒れた場合、細かい寸断が蓄積して、円滑なサプライチェーンに悪影響を及ぼすかもしれない。

道路ストックの高齢化問題

 続いて、全国に約73万橋あるといわれる橋梁だ。河川に架けられた橋は、大雨による増水によって影響を受ける可能性がある。増水した水の威力だけではなく、土砂や流木によって橋脚に過大な負荷が発生すれば、流出や一部崩壊に至る可能性が高まる。今回の台風でも、国道の橋の一部崩落が伝えられた。

 全国に張り巡らされた道路ストックの高齢化問題は、国内貨物総輸送量の半分以上をトラック輸送に依存する日本では重要な課題だ。サプライチェーンを維持するために解決が必要である。日本の橋の約2割は、既に建設後50年を経過しており、これから抜本的なメンテナンスが必要な橋梁が増加する。これもまた早急な老朽化対策が求められている。

土砂災害による道路寸断

 また大雨による土砂災害の影響も考慮すべきだ。大雨の影響で土砂崩れが発生し道路が寸断され、住民が孤立するといったニュースは今回の台風でも発生した。宮崎や神戸で土砂崩れが原因で道路が通行止めになっている。土砂災害は、多くの地方自治体で発生危険度を示したハザードマップが公開されている。自社の拠点やサプライヤー、サプライチェーンの維持に必要なルートに、土砂災害のリスクの高い場所がないかどうか確認が必要だ。

次ページ どうやって対応費用を捻出するか