
米グーグルは、かねてから米国で展開していたデリバリーサービスを拡大している。これはグーグルエクスプレスというもので、グーグルが米アマゾン・ドット・コムに対抗して開始した。もともとはサンフランシスコとロサンゼルスといった限られた地域において、生鮮食品を配送していたサービスだった。
そのエリアはいまでは、全米制覇に近づいている。ウェブ上の情報検索はもちろんグーグルに敵うものはいない。ただ、消費者がネットで何を買ったか? その消費情報はアマゾンが有している。グーグルが、その消費情報――つまり、これまでグーグルがデータを備蓄していなかった領域――に注力し出すのは当然だった。消費情報という新たなビッグデータを活用すれば、さまざまなビジネスチャンスがある。
グーグルエクスプレスの拡大戦略
グーグルは本気でアマゾンに対抗しようとしている。おそらく、この数年が将来の事業を左右すると考えているからだ。そこでグーグルが打ち出したのは、選択と集中だった。選択ということは、選択されないものもある。そこで、生鮮食品の一部は配送・販売しないことに決めた(果物や野菜の一部)。
グーグルエクスプレスは、例えば配送日でいえば即日配送のみではなく、翌日、翌々日などと、複数の条件を地域によって差をつけている。グーグルは現在、50もの企業とともに商品を提供しようとしている。ブランドでいうと、米コストコや米ホールフーズ・マーケットといった訴求力のあるプレーヤーもいる。
生鮮食品を扱わないと、逆にさまざまな地域で拡大展開しやすくなる。ビジネスインサイダーの記事によると、デリバリー業務自体を標準化することで、グーグルはさまざまな外部企業と連携しようとしている。報じられているのは、米OnTracや、米Dynamexなどだ。いずれも、即日配送、あるいはスピード配送を主に売りにする物流業者であり、グーグルのニーズと合致する。
グーグルは、今後、協力する企業を50から数百にしていく計画だ。グーグルは、消費者の近くにそれら企業のリアル店舗がなかったとしても、商品を届けられる点を強調する。
ただ、何はともあれ、グーグルは検索エンジンを持っている。商品名でグーグル検索すれば、すぐさま画面の右などでグーグル関連サイトでの買い物に誘導できるメリットは大きい。一方でアマゾンは、他のサイトで閲覧した商品を、アマゾンでも購入できるアプリを配布するなどの対策を講じている。
グーグル戦略は功を奏すか
グーグルは、このエクスプレスを拡充するための具体的な施策までは語っていない。ただ、先ほど他物流企業と連携すると書いたとおり、いかに商品をスムーズに配送するかを問題意識として持っている。
ところで、そもそも、この短時間配送は、そこまで必要なのだろうか。いや、少なくとも訴求力があるのだろうか。確かに即日配送はありがたい。しかし、それが翌日配送になったり、2日後配送になったりしたら、どれほど問題だろうか。
ボストンコンサルティンググループが実施した米国でのアンケートによれば、即日配送が重要だと答えたのは、全体のたった9%にすぎなかった。74%はなによりも無料配送のほうがありがたいと語ったし、50%は低価格のほうが重要だと語っている。
このボストンコンサルティンググループの調査は2014年のものだが、2015年に実施された別の調査によっても、72%が送料無料が優先事項だと回答している。
実際に即日配送に価値は感じるものの、そこまでの追加コストを負担しようとは考えていないのだ。だからこそアマゾンはプライム会員制度をつくり、そのなかで他の付帯サービスを提供する方式を採用した。
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