
8月の中途採用求人数が最高を記録したと日本経済新聞が報じた。パーソルキャリアの発表によれば、求人数は2カ月振りに過去最高を更新したという。昨今の人手不足を考えれば、別に驚くべき話ではない。しかし、私は続く内容を見て驚いた。リクルートキャリアの発表によれば、新たなビジネスに調達先を開拓する必要性が高まっており、「資材調達・物流・貿易」職の求人が、前年同月比対比で4割も増加しているというのだ。
私はこの記事を、大きな喜びと一抹の不安をもって読んだ。筆者は調達・購買やサプライチェーンをテーマにして、記事を執筆したりコンサルティングや研修・セミナーを行ったりしている。そんなビジネスを通じて出会う人たちが、より良い企業・職場で活躍できるチャンスが増えれば、何よりも喜ばしい。しかし、同時に不安を覚えたのも事実である。果たして、新たなビジネスに必要なサプライヤーを開拓できるバイヤーがいるのだろうか。そんな不安を覚える原因は大きく2つある。
説明できないサプライヤーの営業パーソン
1つめはサプライヤーの問題だ。私は調達・購買の現場で10年以上、新たなサプライヤーの開拓を実践してきた。国内ではほぼ全国を回り、東南アジアや中国・韓国にも足しげく通い、サプライヤーを開拓したのである。そんな経験の中、国内で強く印象に残っているのが、自社の優位性を的確に伝える言葉をもたない営業パーソンである。
現在、全国ではさまざまな都道府県や市区レベルで、ビジネスマッチングを模索する商談会が開催されている。その気になれば1日30社以上の企業との面談が可能だ。新たなサプライヤー情報を入手するのに格好の機会になるかと思いきや、そうとも限らない。サプライヤー開拓に期待をもって臨んでも、期待は裏切られる可能性が高い。残念ながら、ほぼすべての営業パーソンが、自社の優位性を限られた時間で説明できないのである。
もっとも典型的なケースはこうだ。
「当社では、多品種少量生産を実現し、同時にコストダウンも可能です」
もちろん、実現していれば素晴らしいし、魅力的なサプライヤーになるだろう。しかし、よくよく考えてみれば、少量の生産を安価なコストで実現するのは難しいはずだ。いや、実情はわかりきった上でも、そういった売り文句は当然アリだろう。しかし、次の質問をぶつけると答えに窮してしまう。
「どうやって、そんな難しい生産を実現させているのか、具体的な取り組みを教えてください」
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