すべてのサプライチェーン構成要素に関係するSDGs

 こういった問題は、1つの対応策だけで解決できない。企業内では、教育やキャリア構築の観点から、長期的視野で女性が働き続けられる施策が必要となる。また、女性が働き続けるために必要な子育て支援の観点では、地域行政による保育施設の拡充も、関連した課題だ。さまざまな要因が複合的に絡み合っているのだ。同じ目標のターゲットには「5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する」とある。こういった内容は、日本企業のビジネスパーソンでも、特に男性の意識に変革を強いていると読み取れる。

 前述したように目標12も評価が低かった。ここでは、企業活動における廃棄物にまつわる複数の課題が挙げられている。このコラムで過去に扱った「食品ロス」削減もターゲットの1つだ。世界全体の1人当たり食品ロス量を半減、生産・サプライチェーンにおける食品ロスの減少も盛り込まれている。

 日本国内における消費段階における食品ロスは、米に換算すると、1日当たり1人おにぎり2個を捨てている計算になる。日本全体では年間632万トンと、全世界で行われている食料援助量の2倍もの食料が廃棄されている。こういった現実を、2030年までにどのように変革するのか。小売業や外食産業の取り組みに加え、どうしたら食べ物を捨てずに済むのかを、国民一人ひとりが課題として認識し、解決する方策が必要だ。

SDGs目標達成に必要な2つの取り組み

 SDGsに掲げられ、現時点で評価が低い目標と、関連する問題を参照すると、2つの改善の方向性が見いだせる。まず「持続可能な開発」の実現に必要な施策は、サプライチェーン全般に深く根差した企業活動全般が対象となっている点だ。目標12では、食品以外でも廃棄物の大幅な削減を求めている。

 製造業の場合、生産プロセスの廃棄物発生を防止し、削減、再生利用、再利用するには、サプライチェーン各プロセスにおける創意工夫が欠かせない。13年後の2030年まで長期的な視野で、廃棄物をサプライチェーンで減らす全体最適を実現するロードマップが必要だ。サプライチェーンの構成要素が相互に業務内容を理解して、廃棄物を極限まで減らし、最終的にはゼロを実現しなければならない。こういった取り組みを、従来の業務に付加した取り組みと考えるのではなく、企業の成長には不可欠な取り組みとして、全社的な課題へ昇華が必要だ。

 例えば、2020年の東京オリンピックで選手に授与するメダルではこんな取り組みが行われている。「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」は、オリンピック・パラリンピック合わせて約5000個のメダルに必要な鉱物を、使用済み携帯電話等の小型家電等から製作する再生利用プロジェクトである。こういったシンボリックな取り組みをきっかけとして活用し、2020年以降、普段購入する製品にも使用可能な、鉱物資源の再生利用サイクルの構築を世界に先駆けて実現することが求められる。

 大企業や多国籍企業は、こういった取り組みを導入するだけではなく、持続可能性に関する情報を定期報告が奨励されている。「報告」は、これまでCSR(企業の社会的責任)の一連の取り組みで、実行している企業が多いはずだ。今後報告内容にSDGsで掲げられた内容を盛り込むと共に、報告書の内容と経営幹部、従業員の発言や行動の同期化が必要だ。これまで以上に、企業としての取り組みを社員全員で共有する取り組みも必要だろう。

 もう1つは、人々の意識の問題だ。先月内閣府が発表した「国民生活に関する世論調査」は、現在の生活に「満足」「まあ満足」と回答した人が合計74%で、1963年以来最高となった。しかし、SDGsで掲げられた目標やターゲットを見ると、日本人が感じる満足の背景には、グローバルで満足を得られない人々の存在があると、関連付けて直視し改善策を考えるべきだ。同じ世論調査では、生活がこの先、悪くなっていくと答えた人が2割強いた。現在の満足を維持し、かつ世界に広めるためには「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に各企業、各個人の取り組みが必要なのだ。

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