2015年、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が、国際連合に加盟する193国の全会一致で採択された。アジェンダには「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げられ、それは17の目標と169のターゲットから構成されている。2016年から2030年までの持続可能な世界の実現に関する国際社会の共通目標であり、企業経営の将来にも大きな影響を与える内容だ。

 日本では、官民ともにSDGsへの積極的な取り組みが進みつつある。政府は昨年、安倍晋三首相を本部長にした持続可能な開発目標(SDGs)推進本部を設置した。そして2017年8月末、日本経済団体連合会(経団連)は、SDGsの基本理念を取り入れた行動指針の改定を決定した。企業にとっては、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字をとり、環境や企業統治に対する企業の取り組み姿勢を投資判断の材料とするESG投資の広まりもあり、具体的かつ積極的な対応に迫られている。

 SDGsを構成する17の目標は、新興国における貧困や教育といった問題だけではなく、地球環境や都市、雇用、格差問題の解決など先進国にも関係する広範囲に策定されている。広い網羅性によって、企業活動やサプライチェーンの構築に際しても無視できない内容だ。SDGsに沿った、持続可能な企業活動に合わせたサプライチェーンの構築が、課せられた目標といえる。

日本のSDGs達成状況

 SDGsは国連総会における採択から2年余りを経過しており、各国の達成状況が「SDG Index and Dashboards Report 2017」として公開されている。日本は総合で157カ国中11位。日本より上位の国々は、すべてヨーロッパ諸国で占められている。韓国は31位、中国が71位、米国は42位であり、総合順位的にはかなり上位だ。しかし、厳しい評価を受けている目標もある。

 リポートには、各国における目標の達成状況が色分けして示されている。たとえば、日本が厳しく評価されている目標に「目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する」がある。この目標は「先進国主導の下で、開発途上国の開発状況や能力を勘案」し、すべての国々が対策を講じる目標だ。アジアにおける日本の経済的影響力の大きさを、イコール日本が果たすべき責任と捉える必要がある。

 企業におけるサプライチェーン管理の観点から、解決と目標達成に必要な取り組む方法は、どうやって模索すれば良いだろうか。

 まずは、SDGsが国家レベルの開発に関わる共通目標であり、どんな事業であろうとも17の目標と169のターゲットには必ず関連性があり、目標達成への貢献が求められている点を強く意識する必要があるだろう。いわゆる供給網としてのサプライチェーンではなく、供給するためのサプライチェーンを維持するあらゆるリソースが、SDGsの対象と考えるべきだ。中でも、日本の評価が低い目標に「目標5 ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」がある。

 先月帝国データバンクが発表した「女性登用に対する企業の意識調査」によると、女性管理職の比率は、前年比で0.3ポイント上昇している。しかし、諸外国と比較しても、日本における女性管理職比率の低さは明白だ(89ページに資料)。

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