(写真=AP/アフロ)

 かつて私は自動車メーカーで勤務していた。自動車は為替によって利益が左右されるといわれる。部品調達だけではなく、完成車の生産も為替によって検討しなければならない。また、実際に頻繁に、国ごとに生産する台数が変化していた。いわば、生産変動が当たり前の世界にいた。

 その後、私は調達業務のコンサルタントになったが、「生産回帰」という言葉の使われ方に違和感を抱いた。というのも、生産回帰というくらいなら、普通は生産の大半が日本に戻ってきているイメージだ。しかし、“一部”の機種の“一部”の生産が、日本に戻ってきているという。その程度なら、自動車では日常茶飯事だ。別に生産回帰として騒ぐほどでもない。

 さらに、“一部”の機種の“一部”の生産は日本に戻っても、全体的な傾向としては、海外生産は拡大しているという。それはほんとうに生産回帰と呼ぶべきものなのか、私は不思議に感じている。

 たとえば「2016 年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」を見てみよう。49ページでは、確かに日本にたくさん生産が戻ってきている、と思いきや、51ページを見ると日本に戻ってきているのはその一部にすぎず、むしろ大半は中国など海外に流出しているのがわかる。トータルでは生産は回帰していないと断ずるほうが適切ではないか。もちろん、全体の傾向は不変でも、少しでも日本に戻ったらよしとする見方もあるかもしれないが。

ウォルマートの製造業回帰宣言

 ウォルマートは「製造業刷新のためのロードマップ(Walmart Outlines Policy Roadmap to Renew U.S. Manufacturing)」を発表した。詳細はポリシーをご覧いただくとして、ワッペンまで作成して掲げている「Walmart INVESTING IN AMERICAN JOBS(ウォルマートは米国の製造業に投資する)」という標語が印象的だ。政府や議会にも協力してほしいところと、小売業界で努力せねばならないところをあげて、米国の製造業全体を底上げするのが狙いだ。

 目標は3000億ドル分の生産を増やすことと、雇用もおなじく150万人分を増やすことだ(なお、これは関連業種の雇用も含めてのもので、製造業のみでは25万人ほどの雇用増を目指すとしている)。なおこれは2013年から開始されたプログラムで、開始当初より、目標値を上積みしたかっこうだ。