しかし、テスラのキャッシュフローは、これだけで改善しそうには思えない。もちろん、自動車メーカーからすると、外部への支払い調達金額は莫大なものだ。ただ、取引先の各社とも売上高に対する利益が数パーセントでがんばっている。だから、返金に応じたとしても、その売上高にたいして、さらにわずかなパーセントだろう。

 テスラは「モデル3」生産のために、多額のキャッシュフローを必要としている。テスラはリストラクチャリングを敢行し、その数は全従業員の9%にものぼる。数カ月前、イーロン・マスクは、キャッシュフローのプラス化に自信をもっているとした

 それがサプライヤへーの遡及値引きと、リストラクチャリングによるものだけではないだろう。ただ、報道によれば、サプライヤーへの支払代金の引き下げと、条件の各種改善を求めるという。

テスラのキャッシュバック要求とその反応

 テスラは、モデル3が好調にスタートしたなかで、この競争力強化のための機会としている。この動きには辛辣な意見が多く、「テスラは自分たちの利益を心配しているが、一方でサプライヤーのことは気にしていない(They’re worried about their profitability but they don’t care about their suppliers’ profitability)」といった専門家の声を紹介している。さらに、遡及値引きが必要であれば、そもそもビジネスモデルとして成立していないのだ、と。

 なお、私は慎重にここまで書いてきた。というのは、報道のなかでは、テスラが遡及値引きを求めた、という事実がいわれていた。しかし、実際に、そのメモは漏洩していない。相当なサプライヤーがいるはずで、そのどこか複数社がリークしたのだろうが、メモ自体をテスラが完全に認めたわけではない。

 テスラは、あくまでもcapex(設備投資)のコスト削減について取り組んでいるとし、また部品メーカーとは低コストを実現するように設計と工程の変更を試みているとした。だから、テスラが、サプライヤー全社に遡及値引きを要求したのか、あるいは限定的に依頼したのか、または誤解を与える表現にすぎなかったのかは断言を避けなければならない。

 ただし、テスラがキャッシュフローをマイナスにし続けてきた。そのため、ついにサプライヤーにキャッシュバックを要求するにいたったか、とメディアが反応したのは無理もない。また、イーロン・マスクは、今後、「モデルY」の生産も発表している。これから本格的な量産メーカーに移行しようとしている。

 個人的な経験では、自動車は、大量生産になると、まったく予期しないことが起きる。自社の品質トラブルは当然として、サプライヤーからの納入品質が安定しなかったり、納期が間に合わなかったり、あるいは、原材料が値上がりし、突然のコスト高に見舞われたり。想像を絶することばかりだ。

 サプライヤーからの強力なサポートなしには、そもそも自動車会社は成立しない。自動車各社はサプライヤーとの連携を、つねに叫んでいる。あれは、建前ではない。成功もサプライヤーしだいだと信じている。

 テスラは大量生産の地獄をクリアすることができるだろうか。私はサプライヤーとの関係を中心に見守りたいと思う。