購入するサプライヤー数を集約する集中購買は、従来量産効果がクローズアップされてきた。しかし、これからはサプライヤー管理工数の削減も大きなメリットになるはずだ。取引するサプライヤー数が少なければ少ないほど、管理すべき対象は少なくて済む。

サプライヤー管理の実態

 サプライチェーン上のサプライヤーの事業活動に関連した取り組みのすべてを管理するのは非常に難しい。事実上不可能だと言える。日本国内のサプライヤーであっても難しく、海外サプライヤーはより高いハードルが存在する。しかし、昨今のCSRやコンプライアンスにおける企業への要求は、より困難な内容へと変化している。サプライヤーの管理は困難で、事実上不可能だと考えてしまえば、CSR調達やサプライヤーのコンプライアンスといった観点でのリスクが自社にとってヘッジできない大きな脅威となる。

 アップルのサプライヤー責任に関連したプログラムでは、サプライヤーの従業員に直接教育を行う。その結果、教育を受けた従業員が勤務先から報復を受けたかどうかまでフォローしている。多くの日本企業でも、生産効率化や生産技術といった生産現場における技術指導を行う教育は一般的だろう。しかし、アップルの行う教育は、不正な雇用慣行から従業員を守るプログラムだ。労働者の権利と責任といった内容を、サプライヤーの従業員に直接提供する。

「おせっかい」なアップル

 これまで企業の社会的責任が問題となった多くの事例では、問題の所在を世間に知らしめた当事者と、責任を問われた企業に直接的な当事者関係のないケースが多かった。だからこそ、改善するための影響力の行使を求められても、雇用関係を結んでいないといった主張を行い、事態を悪化させてきた。アップルはまさに、直接雇用関係のない相手に「おせっかい」な教育を行って、CSR調達にまつわるリスクを低減しているのである。

 教育では、企業や従業員の正しい考え方やあるべき行動を指し示し、学ぶ機会を提供する。考えや行動の実行はサプライヤーや従業員自らの責任に委ねられる。アップルが唱えるサプライヤー責任は、発注企業としてサプライヤーの行いのすべてに責任をもつ意味ではなく、サプライヤーや従業員に責任を全うさせる環境を整える責任と理解すべきだ。何でもかんでも自らやろうとせず、行うべき内容をわかりやすくサプライヤーや従業員に伝え、実践を促す取り組みも、CSR調達/コンプライアンス経営の正しい対応方法である。

 一般的な教育を考えてみよう。教育者は、教育される側が正しく学べるように最大限の努力を払い、その仕組みや環境を整える。しかし、教育を受ける側の姿勢や理解度によって、好ましい成果を導く場合もあれば、教育が実を結ばない場合もある。教育の成果は、従業員やサプライヤーの経営によって決定する。これこそまさにサプライヤー責任の根幹だ。サプライヤー監査でも、教育した内容の実践を確認すればよい。事実、監査結果によって総サプライヤー数の10%にもおよぶサプライヤー20社と取り引きを打ちきったと報告している。

 日本企業の場合、サプライヤーのあれもこれも、何もかも確認して問題なしを目指す。しかしサプライヤーの事業運営や、従業員管理には、直接タッチできない。事業運営や従業員管理こそ、サプライヤーの仕事である。しかし、監査の際にサプライヤー社内のリソースの実状を目の当たりにして、すべてを求めるのには無理があると感じるケースも少なくない。日本でも大企業と中小企業の大きな違いの1つに、社内管理体制の充実や、教育訓練制度が挙げられる。これは企業規模に根ざしたリソースの違いだ。

 アップルの取り組みは、自社のリスクを軽減させるため、サプライヤー自らに責任を全うさせ、そしてリソース不足を補う仕組みをプログラム化している。サプライヤーに企業としての自主自立の基本を改めて求めていると言っても過言ではない。決してサプライヤーの立ち振る舞いのすべてに責任を取ろうとは思っていないのだ。