サプライチェーンを「部品供給網」と据えてもいい。どんな企業でも「調達」は重要な要素であり、サプライヤーから円滑な供給が受けられなければ、自社内、それ以降のサプライチェーンに悪い影響を及ぼす。結果的に企業の競争力も高まらないだろう。

 しかし、サプライチェーンを「部品供給網」とだけ、限定して捉えるのは、事業全体の一部分にだけ着目しているに過ぎす、さらに他のプロセスに負の影響を及ぼす。全体を見据えて、バランスの取れた原材料、部品の調達から、顧客におけるモノやサービスの利用まで含めたサプライチェーンを実現しなければならない。

誤って理解した日本企業

 日本企業でサプライチェーンを「部品供給網」と、わざわざ語彙を狭めて考えるのは理由がある。1990年代後半、アメリカ発の新たな経営手法として、サプライチェーンマネジメントが日本で登場した。当時は、ビジネスのスピードを画期的に速める「ネット時代のカンバン方式」といった内容で紹介された。各社はこぞってカンバン方式と関連づけ「在庫圧縮を実現する取り組み」として導入した。本来的にサプライチェーンがもつ意味を随分と狭めて捉えてしまったのだ。この「ボタンの掛け違い」が、現代に至るまでサプライチェーンを矮小化して捉える大きな要因になっている。

 在庫削減に代表される、原材料や部品、完成品まで含めた「モノ」だけを管理する手法と捉えてしまったゆえに、サプライチェーンマネジメントを実践する上で不可欠な重要な「情報」への取り組みがおろそかになってしまった。在庫を削減するためには、顧客や市場動向を的確につかんだ、精度の高い「情報」が不可欠だ。

 1990年代後半は、インターネットが普及し、生活のあらゆる場面での活用が広がった時期だ。同時に、インターネットを活用した情報通信技術が、極めて安価にすべての企業に活用できる環境が整い始めた時期でもある。部品供給網を最適化するには、その前工程の販売情報や、社内の生産計画に基づいた情報が欠かせない。しかし、モノの流れとは逆方向に提示されるべき情報に、なぜか関心が薄い企業が多い。

サプライチェーンにおける情報の重要性に注目せよ

 その結果、日本ではサプライチェーンと一緒に語られる言葉が「断絶」とか「維持」になってしまう。もちろん大災害発生の後、サプライチェーンを維持する方法は、どんな企業でも重要な課題だ。しかし本当のサプライチェーンの運用は、異なる方法であっても同じサプライチェーン上にある以上、情報共有し、円滑なオペレーションを、スピードを高め実現するのが目的なはずだ。そういった高い次元でサプライチェーンマネジメントを実現するには、もっと情報の取り扱い方法に目を向けるべきだ。

 アマゾンは情報にも抜かりはない。7月27日、アマゾンは第2四半期の決算を発表した。アマゾンの利益の柱は物販ではない。アマゾン ウェブ サービス(AWS)と呼ばれる企業のITインフラサービスに支えられている。日本の大手企業でも、人事や経理、顧客管理に活用されている。社内の管理だけではなく、企業と顧客管理に必要なアプリケーションやサービスを、AWSを活用し開発・運用している。今、使っているクラウドサービスやアプリケーションも、実はAWSによって運用されているかもしれない。知らぬうちにアマゾンのユーザーになっているのだ。

 最近、アマゾンの新たな取り組みに関するニュースを見ない日はない。ホールフーズの買収のような、取り扱い製品の幅を広げ、通販だけではなくリアル店舗も含め拡大するだけでなく、製品やサービスを提供する企業の情報インフラも握る。サプライチェーンに必要なモノやサービスと情報インフラの双方を手中に収めるべく拡大しているのが今のアマゾンの姿だ。

 サプライチェーンは、ただ断絶させなければいいのではない。平常時に、スピード感をもった効率的な運用を実現して、初めて顧客満足度や企業業績の向上へとつながってゆく。サプライチェーンを、顧客満足度や企業業績へ連鎖できるかどうかは、企業全体に存在するサプライチェーン全体を見渡して、適切なマネジメントの実践が不可欠だ。部品供給網だけと考えている企業に未来はないのだ。