(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 連日の猛暑によるさまざまな影響が取りざたされている中、先月JR西日本が猛暑による線路の高温を理由に、一部の列車を運休させる事態が起きた。高温は人だけではなく、私たちが日常生活で活用している機械や設備にも大きな影響をおよぼす。

 鉄道の線路は、温度が60度以上になると、熱の影響により線路が曲がってしまう可能性がある。ひずみが発生すれば安全運行に支障をきたし補修が必要となる。先月14日、JR西日本片町線四条畷駅では、午後3時2分に線路の温度が59度を記録した。点検の結果、線路のひずみは発見されず夕方には運行を再開した。多数の乗客を運ぶ公共交通機関には、なによりも安全運運行が求められる。こういった処置はやむを得ないだろう。そして、こういった事象にこそ、酷暑が影響する可能性を学ぶべきである。

 鉄道の線路は、多くの場合は屋外に設置され、あらゆる環境条件を想定しているはずだ。しかし、想定を超えた高温によりこのような事態が起こっている。連日気温が35度を超える猛暑日が続けば、サプライチェーンを支える各工場においても従来の想定を超えた悪影響への備えが必要である。高温による影響で、生産設備の稼働に影響があれば、局所的なサプライチェーンの断絶を発生させる可能性がある。特に日本国内の生産設備は今、温度上昇がリスクとなっている可能性が高い。

高止まりする設備年齢

 現在、中小企業の設備年齢が高まっている。4月に発表された中小企業白書によると、1990年度対比で生産設備年齢指数が、2016年度に194.1まで高まっている。大企業も148.6となっており、日本企業の設備は老朽化が進んでいるが、特に中小企業の設備の老朽化の度合いが激しい。

 現在、一部の業界では、モノの確保が危ぶまれるほどに、高い受注を抱え、工場も高い操業を維持している。そういった業界で、暑さによって設備稼働に影響がでると、サプライチェーン全体の生産活動に大きな影響を与える。特に7月から8月は、各企業とも夏休みを計画しているはずで、生産量は他の月と比較しても落ちこむ。加えて、暑さによるマイナス影響が顕在化すれば、サプライチェーン全体への影響も大きくなってしまう。

 ここ数年では、企業の設備投資の姿勢も持ち直し、生産設備年齢指数も下落傾向を示している。しかしながら、多くの企業で、老朽化した機械をメンテナンスしながら、大切に活用しているのが実情だ。筆者が最近訪問した中小企業でも、昔ながらの機械を使用してモノづくりを進めている企業が多い。多くの企業には、今年の酷暑の中で生産を行う上で不安な要素がもう一つある。

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