あのときの衝撃は忘れられない――。目の前の画面では、アップロードされたデータの機械学習がただちに始まり、さらに数十ものアルゴリズムが試行され、最適なモデルをただちに導いていた。機械学習では、データの取得とともに、特徴量の整備、さらに無数のアルゴリズムのテストが必要だ。しかし、DataRobotのデモは、誰もが機械学習を活用できる容易さを確かに感じさせた。

 DataRobotは、2012年に「AIの民主化」を掲げて米国ボストンで創業された会社だ。2017年には日本オフィスが誕生した。公表されているだけでも、リクルート、パナソニック、大阪ガス、三井住友カードなど、最大手企業に採用されており、すでに数多くの予測モデルを完成、運用させている。いま、最注目の企業といっていい。

 私はコンサルタントの立場から、この機械学習プラットフォームの可能性などを聞いた。

「AIの民主化」とはなにか

坂口:対談の当日、働き方改革の法案が通りました。この是非は置いておくとして、国全体が労働者の生産性を上げねばならない流れで、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とAI(人工知能)がバズワードになっています。RPAはいいとしても、AIは、よく理解されないまま魔法の杖のような扱われ方をしています。

 私自身はプログラミング言語・Python(パイソン)を使用して機械学習をテストしています。それで、なにか面白いツールがないかな、と思っていました。すると、マーケティング・エバンジェリストの神田昌典さんが、どこかでDataRobotを絶賛なさっていて、私もデモを見せてもらったら驚愕しました。

 読者のために補足しておくと、AIのなかで、機械学習というのは、まず過去のデータを収集する必要があります。たとえば、ある顧客が年間にどれくらい店舗でお金を使ってくれるかと予想したい場合、過去の顧客データから、年齢、所得、居住地、性別……というものを学習させねばなりません。ただ、多くのデータは整形されておらず、そのままでは利用できないので、データの整形が煩雑になります。ただ、DataRobotを利用した場合、ある程度整形されたデータさえあれば機械学習ができる。さらにどのアルゴリズムがいいかも教えてくれる。

原沢滋(はらさわ・しげる)氏
DataRobot Japan カントリーマネージャー・ジャパン University of California Berkeley校卒。日本オラクル社に新卒入社。その後エクスペリアン・ジャパン、日本ネティーザで日本ビジネスの立ち上げメンバーとして日本のマーケットでの技術、市場開拓を担当。IBMによるネティーザの買収に伴い日本IBMに移籍。同社においてビッグデータ・アナリティクス部を率いる。2016年からはDataRobotのビジネス開発を担当し、2017年2月より現職。

原沢:そうですね。たとえば、金融機関の方が新規融資の際に、AIを使って貸し倒れ率を知りたいとします。過去の貸し倒れデータがあったとすると、DataRobotに過去のデータをロードして、スタートボタンを押すとあとは自動的にAIがやってくれる。アルゴリズムもDataRobotが勝手に選別してくれて、数十の予測モデルを自動に作成し、モデルの精度、説明、検証までしてくれます。あとはシステムに組み込むためのAPIも作成してくれるので、担当者はその時のニーズに合わせて、精度のよいものを使うのか、説明が納得いくものを使うのか、DataRobotの推奨するモデルを使うのかを決めて運用に入るだけです。

 DataRobotには世界有数のデータサイエンティストが複数在籍しておりDataRobotを使うと世界トップのデータサイエンティストの知識が詰まったAIが、自分のロードしたデータで自分のためにモデルを作ってくれます。

坂口:私なんていちいちソースコードを書き換えていますから、この同時検証機能は凄い。

原沢:最大の強みというのは、ビジネス側に展開しやすい点ですね。私はデータサイエンティストではありませんが、DataRobotは誰にでも使えるという利点がすごくあると思っています。たとえば、iPhoneには、技術的に新しい発明はあまり入ってない、と誰かが言っていました。私もそれを聞いて、なるほどと思いました。もともとそれぞれの技術はあったのだけれど、それをアプリケーション、電話、インターフェースという点で一つにまとめ、新しい使い方を提案した。あれがiPhoneのイノベーションで、組み合わせとユーザーインターフェースがすばらしいのだと、誰もが使うようになった。同じようにDataRobotのイノベーションも、ボタン一つのクリックで機械学習を検証するところだけでなく、その後の見せ方、アクションさせる点にビジネスに対する組み合わせのイノベーションがあるのだと思っています。

 結局は実際のビジネスに使えないと意味がありません、機械学習をやることが目的ではなく、ビジネスの目的を達成することがゴールであって、そのためには、どの特徴量が一番効いたであるとか、解釈であるとか、分析結果を理解できて意思決定にすぐにつなげられることが、すごく重要です。